日本のシーシャ業界の淘汰と市場の変遷

1閉店したシーシャ店の一覧と閉店理由

近年、急増していたシーシャ(水タバコ)カフェ・バーが2023年頃から全国的に閉店ラッシュに見舞われました。2022年春時点で全国約1,013店、東京都内だけで368店に達した店舗数は、2023年初めには約1,380店まで急増しました。しかし供給過多による競争激化やコロナ禍の影響などで需要が追いつかず、2023年~2024年にかけて多数の店舗が撤退を余儀なくされています。以下、把握できる限りの閉店事例とその主な理由を挙げます。

  • シーシャ カメレオン上野(東京・上野) – 2023年12月30日閉店。約2年半の営業でした。SNSでは「2年半のご愛顧ありがとうございました」と閉店報告があり、若者に人気の上野エリアでしたが競争激化に勝てず撤退したとされています。
  • fuuuu shisha & cafe×Bar(フー)(東京・渋谷道玄坂) – 2023年頃に閉店。渋谷駅近くの百軒店エリアにあった店舗ですが、現在はディレクトリ上も情報が空欄で営業終了しています。渋谷はシーシャ店が乱立していた激戦区で、過当競争による採算悪化が背景とみられます。
  • suuka(吸香)(東京・原宿) – 既に閉店済み(詳細時期不明)。原宿駅近くの店舗でしたが、短期間で姿を消しました。表参道・原宿エリアでもブームの一巡と競合増加により集客が伸び悩んだものと推察されます。
  • THE SHISHA HOUSE 梅田店(大阪・梅田) – 2023年に閉店。大阪の繁華街に位置し人気だったチェーン店ですが、大箱店舗の固定費負担と客足減で苦境に陥り閉店した例です。大阪でも主要エリアでシーシャ店が林立した結果、淘汰が進みました。
  • shisha cafe Siesta 八事店(名古屋・八事) – 2023年8月末で閉店。約2年の営業でした。ブーム期に郊外エリアで開業した店舗ですが、地元客の掘り起こしが想定ほど進まず、採算が合わなくなったと見られます。
  • ENZAN 覚王山店(名古屋・覚王山) – 2024年3月末で閉店。古民家改装のお洒落な店舗でしたが、約2年半で幕を閉じました。名古屋市郊外の高級路線店でしたが、ブームが一巡し需要が細ったため撤退しています。
  • THE SHISHA HOUSE 新潟駅前店(新潟市) – 開業3年で閉店(2023年閉店)。新潟市内のシーシャ専門店はこの閉店で一時ゼロとなり、地元愛好家に衝撃を与えました。地方都市では潜在客層が限られ、ブーム終了後に需要が維持できず経営継続が困難になる典型例です。
  • THE SHISHA HOUSE 名古屋栄店(名古屋・栄) – 2024年6月29日をもって閉店。約6年間営業してきた全国チェーン店で、「グランドフィナーレ」と題した閉店案内が出されました。チェーン全体の業績不振に伴い地方店舗の整理が行われた一環で、栄店閉鎖後は同チェーンは東京・埼玉など主要都市に経営資源を集中させています。
  • チルイン西武新宿店・西武池袋店(東京・新宿/池袋) – 大手チェーン「チルイン」の都内店舗。一時は新宿駅・池袋駅近くで営業していましたが、2023年前後に相次いで閉店しています(※後述の経営悪化に伴う店舗整理の一環)。繁華街一等地に位置し集客力はありましたが、人件費や家賃負担が重く、収益性改善のため閉店に踏み切ったものとみられます。
  • 相席シーシャラウンジSIX(東京) – 2023年10月31日閉店。相席コンセプトのシーシャラウンジとして話題性がありましたが、オープンから1年足らずで閉店を発表しました(Instagramで告知)。コンセプト業態でもコロナ禍の影響や集客難により短期間で撤退するケースです。
  • Luna(愛媛県松山市) – 2024年9月にオープンした「タコスとシーシャのバー」でしたが、わずか4か月後の2025年1月末で閉店となりました。外国人客や女性に人気で雰囲気も好評だったものの、地方都市での集客の限界や話題性頼みの繁盛が長続きしなかったことが原因と考えられます。

これら以外にも、2023年以降閉店・撤退したシーシャ店は枚挙にいとまがありません。都市部では渋谷・新宿・上野・池袋など主要エリアで複数の店が閉店しましたが、それでも各エリアにまだ競合店は残っています。地方では数少ない店が消えて“シーシャ難民”が出るケースもありました。閉店理由として公に挙げられるものは「諸般の事情」「本業専念のため」等とぼかされる場合も多いですが、実態としては**経営不振(採算悪化)**がほとんどです。要因を総括すると以下のようになります。

  • 過当競争・市場飽和: ブーム期に乱立した店ほど明確な差別化がなく、生き残りに苦戦しました。特に個人経営の小規模店は資金力やノウハウ不足で開業1~2年で撤退という例が目立ちます。都市部では供給過剰の調整局面に入り、弱い店から退出し始めています。
  • コロナ禍の打撃: 2020~2021年の緊急事態宣言下で営業休止や時短を強いられ、売上が大きく落ち込みました。特にナイトタイム営業に依存するシーシャバーは痛手を被り、体力のない店舗は休業からそのまま閉店に至ったケースもあります(※コロナ明けまで休業すると告知後、再開せず閉店した店舗も存在)。一方でコロナ禍でもシーシャブーム自体は下火にならず出店は続いたため、コロナ後に競争が一気に激化する結果ともなりました。
  • 物価高・コスト増: 近年の円安やインフレでシーシャ関連の経費も増大しました。輸入炭やフレーバーの価格上昇、光熱費・家賃の高騰が経営を直撃。あるシーシャ炭メーカーは「為替変動や生産コスト上昇により2023年から値上げせざるを得ない」と発表しています。値上げ分を価格転嫁できず利益圧迫に陥った店も多く、客離れを防ぐための過度な値引き(例:「500円で吸い放題」イベント)も長期的には持続不能で閉店に至りました。
  • 喫煙規制の強化・法的リスク: シーシャ専門店は改正健康増進法下で「喫煙目的施設」として営業可能ですが、社会全体の嫌煙志向の高まりで新規客獲得が伸び悩む要因となっています。また一部店舗では違法ドラッグ(THCリキッド等)の提供が発覚し摘発・閉店する事件も起き、2023年8月の指定薬物規制強化と相まって業界イメージを悪化させました。こうした法規制環境の厳しさもオーナーに撤退を決断させる一因です。

以上のように、シーシャ業界はブームによる急増から**「新規参入の増加 → 過当競争 → 不採算店の淘汰」という典型的サイクル**を辿っている状況です。現在残っている店舗は、資本力とブランド力のあるチェーン店か、固定客を掴んだ一部の強い個人店のみという二極化が進みつつあります。

2. チルインの民事再生に関する詳細分析

日本最大級のシーシャカフェチェーンだった**「チルイン」**も、この淘汰の波に飲み込まれました。チルイン(チル株式会社)は2011年に東京・高円寺で創業した業界の老舗ブランドで、国内で初めて「飲食物持ち込み自由&フリードリンク制」を採用した革新的シーシャ店として知られます。関東の主要ターミナル駅や繁華街に次々と店舗を展開し、「いつでもどこでも安心して美味しいシーシャが吸える社会」を目指して成長してきた企業です。最盛期には都内中心に十数店舗を運営し、シーシャブームを牽引する存在でした。

しかし、2020年代前半の市場環境の悪化によりチルインも経営が悪化します。コロナ禍での来客減少、競合店乱立による客単価低下、物価高によるコスト増など複合的な要因で業績は次第に悪化しました。チルインの年商はピーク時には10億円規模に達していたとみられますが、2023年7月期の年売上高は約8億2,800万円まで減少しています。さらに追い打ちをかけたのが債権者とのトラブルでした。ある債権者との間で訴訟トラブルを抱える中、その債権者から預金口座や売掛金を仮差押えされる事態となり、資金繰りが逼迫。このままでは従業員への給与支払いや店舗運営に支障をきたす恐れが生じたため、やむなく法的整理に踏み切ったのです。

チルインは2024年9月5日付で東京地方裁判所へ民事再生法の適用を申請し、同月11日に再生手続開始決定を受けました。負債総額は公表されていませんが、主要債権者との調整を図りつつ再建を目指すことになりました。民事再生の申立直後もチルイン/チルアップ全店舗は通常通り営業継続すると発表され、顧客や取引先への影響を最小限に抑える姿勢が示されています。これは単なる延命措置ではなく、「シーシャ業界のさらなる成長」と「チルインの運営を持続可能なものとするため」の前向きな決断であると公式発表されています。

経営破綻の主な要因として、上述の市場全体の逆風に加え、チルイン特有の事情も指摘できます。

  • 過剰出店と競合激化: チルインはブームに乗って都心部を中心に急拡大しましたが、それに追随する形で他社も主要エリアに進出し、ブランド力の希薄化が起きました。スターバックス並みに乱立した都内のシーシャ店群の中で、かつての「老舗」「安心のチェーン」というチルインの強みが相対的に埋没し、集客競争に苦戦しました。フランチャイズ展開も行っていましたが、ブーム終焉とともに一部加盟店が撤退し本部が音信不通になるようなフランチャイズの混乱も生じたとされ、統制コストも増大していた可能性があります。
  • コロナ禍と営業時間短縮: チルイン各店は深夜営業(朝まで営業)も多く、コロナ禍の営業規制で大きな打撃を受けました。特に2020~2021年の緊急事態宣言では長期間の酒類提供停止・営業時間短縮を強いられ、売上直撃と固定費負担に苦しみました。常連客も足が遠のき、その間に自宅シーシャなど他の楽しみ方へのシフトも起こり、コロナ後も客足が完全には戻らなかったことが考えられます。
  • 運営コスト増大と利益圧迫: チルインは都心の一等地物件に多数出店していたため家賃負担が大きく、さらに全店フリードリンク(ソフトドリンク飲み放題)サービスを採用するなどサービス過剰気味な面もありました。円安によるフレーバーや炭の仕入れコスト増も直撃し、値上げにも限界がある中で利益率が低下していたと見られます。
  • 資金繰り悪化の直接要因: 前述のように、債権者からの仮差押えというアクシデントが致命傷となりました。この債権者トラブルの詳細は明らかでありませんが、例えば店舗物件の賃貸借を巡る保証金返還訴訟や、業務提携先との契約トラブル等が想像されます。いずれにせよ、現金や売掛を差し押さえられてしまうと日々の店舗運営資金が枯渇してしまうため、民事再生手続で一旦差押を停止し立て直す必要に迫られました。

破綻後の動向と再生計画: チルインは民事再生手続に入りつつも、事業継続を前提に再建策を進めています。2025年1月には経営体制の刷新を発表し、創業者の杉山祐代表取締役が退任、新たに栗山恵里奈氏が代表に就任しました。栗山新代表は現場出身の若手で、「特別な日だけでなく日常のひとときにシーシャを取り入れる新しいライフスタイルを提案したい」とコメントしており、従来のチルインの延長線に留まらない**サービス改善やブランド再構築(リブランディング)**に意欲を示しています。

再生計画の詳細は非公開ですが、考えられる施策としては、不採算店舗の閉鎖・統廃合や、運営効率化のための人員配置見直し、債務の一部カットまたは返済スケジュール猶予などが挙げられます。実際、民事再生申請前後に池袋や新宿の一部店舗を閉店させており(店舗一覧から削除)、これも採算悪化店の整理と思われます。残った主要店舗については引き続き営業を続けながら、顧客離れを防ぐためポイントカード導入やイベント開催などテコ入れも図っています。また、スポンサー支援による資金調達の可能性も報じられてはいませんが、水面下で投資交渉が行われている可能性はあります。

チルイン破綻が業界に与えた影響: 業界最大手の経営破綻は、市場に大きな波紋を広げました。まず市場の信頼感低下です。「あのチルインですら倒れるのか」との驚きと共に、シーシャビジネスの先行き不安が広がりました。シーシャ開業を検討していた個人や企業が計画を見直したり、銀行など金融機関が融資に慎重になるといった連鎖も考えられます。実際、「ブームに乗れば儲かる」と参入した層に対し、チルインの破綻は過熱した市場への警鐘となり、出店ペースは大きく鈍化しています。

他店舗への波及も少なくありません。チルイン各店は比較的安価で均一なサービスを提供していたため、その利用者が他店に流れる動きも出ています。とはいえ市場全体のパイ自体が縮小傾向にあるため、他店が大きく潤う形にはなっていません。むしろ業界関係者からは「チルインほどの規模でさえ厳しい現実から、今後は生き残り組もさらなる努力が必要」との声が聞かれます。大型チェーンが躓いたことで、中小店は逆に差別化の好機と捉え、サービス品質向上や独自路線の追求に力を入れ始めています。

総じてチルインの民事再生は、シーシャブームの終焉と市場再編を象徴する出来事でした。タピオカミルクティーのブーム崩壊後に乱立店舗が撤退した現象にも喩えられ、今後の業界の在り方を占う転機となっています。

3. シーシャ市場の現状と今後の展望

現状:競争を勝ち残った店舗の特徴 – 過酷な淘汰を生き延びた店舗には共通する特徴があります。一つは高付加価値路線で差別化していることです。高級ホテルのラウンジに併設されたシーシャバーや会員制VIP向け店舗など、一部富裕層や熱心な愛好家に支えられる店は堅調です。内装やサービスに多額の投資を行い「特別な体験」を提供することで、価格が高くても一定の需要を確保しています。例えば都内某所の高級シーシャラウンジでは個室料数万円でも予約が埋まるケースがあります。他方で低価格帯でも熱狂的ファンを掴んだ店も残っています。薄利多売の厳しさから多くの安価店は消えましたが、店主の人柄やコミュニティ作りによって常連に愛される店は生き残りました。極端な例では、学生街で学生客に特化し口コミで人気を博している店などです。結局、生き残ったのは「高単価でも満足度の高い店」か「低単価でもここでしか味わえない居心地を提供する店」に二極化し、中途半端な店ほど淘汰された印象です。

またチェーン展開店 vs 個人店という視点では、資本力のあるチェーンが相対的に有利でしたが、チェーンも不採算店の整理を進めた結果、生き残り店舗数を絞っています。大手ほど撤退判断も早く、不振店を切り離すことで母体を守りました。一方、個人経営店は体力不足で次々脱落しましたが、その中でもオーナーの熱意と工夫で生き残った店は「他店にはない特色」を打ち出しています。例として、水タバコにアートパフォーマンスを融合させSNS映えで集客している店、シーシャ×ボードゲームといった複合業態でリピーターを増やした店など、小回りを利かせ独自路線を極めた店舗が粘り強くファンを維持しています。

市場の変遷:ブームから淘汰へ – 日本のシーシャ市場はこの5~6年で急激なブームの立ち上がりと崩壊を経験しました。2018年前後から若者を中心にシーシャカフェ文化が広まり始め、SNS等で「チルする」トレンドが拡散。2019年には一種のブームとなり、2020年頃から都心・地方問わず新規開業が続出しました。その結果が前述のように2023年初頭の推定1,380店という店舗数です。これはスターバックスの国内店舗数に迫る勢いで、社会現象と言える増え方でした。

しかし2023年を境に潮目が変化しました。ブームによる供給過多がピークに達し、需要とのミスマッチが顕在化。SNS上でも「どこのシーシャ店も満席だったのが、今は空席が目立つ」といった声が増え始め、同時に閉店報告が相次ぐようになります。特に東京や大阪など都市部でその傾向は顕著で、人気エリアの店ですら撤退を余儀なくされました。一方、地方でもブームが一巡すると需要が細り、地域からシーシャ店が消えてしまうケースが見られました。2023年~2024年にかけて全国的に店舗数は減少傾向に転じ、現在市場は「適正な数への調整段階」にあります。業界関係者によれば、「2025年までには半減もありうる」との観測もありますが、逆に残った店に客が集中し始めており淘汰のペースは徐々に落ち着きつつあるとの見方もあります。

今後の課題 – シーシャ業界が今後直面する主な課題は以下の通りです。

  • 規制環境と社会の目: 法律上は喫煙目的施設として営業可能とはいえ、今後さらに禁煙規制が強化されれば営業可能なエリアや方式に制限がかかる恐れがあります。例えば全面個室化の義務づけや厳格な換気基準の適用などが議論される可能性もあります。また未成年者の入店や違法物質混入への取り締まり強化など、健全化と引き換えに運営コストが増す課題にも向き合わねばなりません。社会全体の嫌煙志向が高まる中で、「シーシャ=合法だがグレー」という印象を払拭し、健全な娯楽として定着させられるかが重要です。
  • 収益モデルの再構築: 過当競争期に薄利で集客していたビジネスモデルは持続不可能であることが明らかになりました。今後は適正価格でサービス提供し十分な利益を出す収益構造への転換が求められます。具体的には客単価アップ策(フードやアルコール提供で客単価を上げる、長時間滞在では追加料金を課す等)や、コスト削減&効率化(自動炭機器の導入、人件費抑制のためセルフサービス導入検討など)が課題となります。物価高が続く限り経費節減は必要不可欠であり、業界団体を通じた共同仕入れによるコスト圧縮などの取り組みも考えられます。
  • シーシャ文化の再提案: ブームが去った後に、シーシャを一時の流行で終わらせず文化として根付かせる努力も課題です。常連客以外の新規層を掘り起こすには、シーシャの楽しみ方や魅力を再発信する必要があります。例えば「リラックスできる健康的な嗜好品」という文脈でアピールしたり、カフェ要素を強化してノンニコチン利用を推奨するなど、ネガティブなイメージを覆すブランディングが求められます。また他産業(バー業界や観光業等)とのコラボレーションで新たな需要を創出することも課題であり、発想の転換が迫られています。

今後の成長の可能性 – 課題は多いものの、シーシャ業界にはまだ成長の余地も残されています。考えられる今後の展望をいくつか挙げます。

  • トレンドの多様化: 従来はニコチン入りフレーバーが中心でしたが、ノンニコチンシーシャが重要なキーワードになっています。非喫煙者や女性でも抵抗感なく楽しめるよう、ハーブ系フレーバーや紅茶の茶葉を使ったシーシャなどヘルシー志向の商品が増えています。実際、紅茶ベースや果実を丸ごと器にするフルーツシーシャなど「香りと見た目」を重視した新メニューが各店で登場し、ニコチンゼロでも満足できるシーシャ体験が追求されています。愛好者のすそ野が広がるほど「煙の量や風味はそのままに健康負荷だけ抑えたい」という需要は高まっており、新興メーカーも次々とハーブフレーバー開発に参入しています。
  • CBDシーシャの台頭: 大麻由来成分であるCBD(カンナビジオール)は精神作用がなく合法でリラックス効果が期待できるため、若者を中心に人気です。東京や大阪ではCBDオイルを取り入れたカフェが増えており、シーシャ業界でもCBD入りリキッドを用いた電子シーシャやシーシャ用ヘンプフレーバーの提供が始まっています。例えば東京・大阪の「PukuPuku」ではCBDシーシャをメニューに掲げ、「煙の刺激が少なく初心者でも楽しめる新しい体験」と紹介しています。CBD以外にもカモミールやラベンダー等リラクゼーション効果のあるハーブをブレンドした機能性フレーバーの開発も期待され、シーシャが嗜好品の域を超えて“ウェルネス”の文脈で語られる日も近いでしょう。
  • 技術革新とサービス進化: シーシャ関連テクノロジーの進化も市場を変えていきます。注目は電子シーシャ・ポータブルシーシャです。使い捨て型や充電式の電子デバイスでリキッドを加熱し、水タバコ同様の風味と煙を楽しめる製品が増えてきました。ニコチンゼロのものが基本で、日本製品も登場し通販でも人気となっています。場所を選ばず手軽に“シーシャ気分”を味わえるため、自宅やアウトドア需要が高まり、従来のシーシャ店にも影響を与えています。今後、シーシャバーでも電子シーシャの貸出・販売を行ったり、水タバコと電子デバイスを組み合わせたハイブリッドサービスが登場する可能性があります。例えば海外で開発が進む**電気ヒーター炭(電子制御炭)**による温度管理の自動化技術などが日本に導入されれば、初心者スタッフでも安定した品質提供が可能になり、人件費削減にも寄与するでしょう。
  • インバウンド需要と国際化: 日本のシーシャラウンジは外国人観光客にも徐々に人気のスポットになりつつあります。訪日客からは「チルな雰囲気で快適」「スタッフがフレンドリー」と高評価の声が多く、特に日本ならではのユニークなフレーバー(抹茶、柚子、桜など)は「日本文化の新たな一面を体験できる」と好評です。内装の清潔さや洗練された雰囲気も他国のシーシャ店と比べて独特で、「高級カフェのようだ」と驚かれることもしばしばあります。今後インバウンドが本格回復すれば、こうした日本流シーシャの魅力を武器に観光客需要を取り込むチャンスがあります。英語対応やハラル認証フレーバーの導入など国際化対応を進めることで、新たな成長市場を開拓できるでしょう。
  • 適者生存による安定期: 不要不急の店舗が淘汰された後、市場には真に求められる店だけが残ることになります。例えば「この街にこの店がないと困る」と言われるような存在になれば、競争相手が減った分だけその店にとっては追い風です。現在進行中の淘汰の波が一段落すれば、生き残った店舗同士は棲み分けが進み、過度な価格競争のない安定期に入る可能性もあります。そうなれば各店が腰を据えてサービス向上や新商品開発に取り組めるようになり、緩やかな成長軌道に戻ることも期待できます。

総括すると、日本のシーシャ業界はブーム期の熱狂と拡大、そして飽和による急減速を経て、新たな成熟期へ移行しつつある段階です。今後しばらくは閉店が続く厳しい局面が予想されますが、需要そのものがゼロになるわけではなく、むしろ新しい楽しみ方や技術の導入によって質的に進化した市場が形成される可能性があります。適切な規制のもとで「合法的な大人の娯楽」として定着すれば、かつてのような過熱はなくとも安定した人気を維持できるでしょう。淘汰を生き抜いた店舗が中心となり、シーシャ文化を次のフェーズへと発展させていくことが期待されます。

 

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