VAPE業界 主要香料メーカーはどうなった?

目次

1. 主な香料メーカーの市場シェア・主力製品・業界内評価

  • The Perfumer’s Apprentice/The Flavor Apprentice (TFA/TPA) – 米カリフォルニアの香料メーカーで、300種類以上のフレーバーを展開する業界最大手の一つです​。食品安全基準に合致した高品質な香料を製造しており、グローバルなVAPE業界で最も信頼されるブランドとして知られています​。とくにバニラカスタードやRY4ダブルなど定番のフレーバーはDIYリキッド愛好家に支持され、200種類を超える豊富な香料ラインナップと品質の高さから米国トップクラスのシェアを持ちます​。人気レシピにも頻繁に採用されており、数多くの有名リキッドブランドがTPA系の香料を使用しています。

  • Capella Flavors(カペラ) – 米国発の香料メーカーで、150種類以上の水溶性フレーバーを展開しています​。元々コーヒーや紅茶用のフレーバードロップから始まり、2008年創業以来フレーバーの種類を拡充してきました​。VAPE用途でも非常に評価が高く、デザート系フレーバーに強みがあります。中でも「バニラカスタードV1」は濃厚な風味でVAPEリキッドに適しており、業界で伝説的な人気を誇る代表製品です​

    (ジューシーさを保ちつつ有害成分を抑えたV2版も提供)。バニラカスタードのヒットによりCapellaはDIYリキッド界で揺るぎない地位を確立し、これが同社ブランド確立の原動力となりました​

    。品質の高さと多彩なフレーバーで世界60か国以上に出荷されており​、業界内での評価も総じて高いです。

  • FlavourArt(フレーバーアート) – イタリアの香料メーカーで、2006年に夫妻により創業されました​。食用香料メーカーとしてスタートし、現在も食品グレードの香料を製造しています​

    。VAPE向けの高濃度フレーバーのパイオニアであり、安全志向の製品開発で有名です。例えばジアセチルやアセチルプロピオニル(バター系香料に含まれる有害物質)を一切含まないレシピを採用するなど、安全性への配慮が業界内で評価されています。代表的なフレーバーに「フレッシュクリーム」や「ストロベリー(Red Touch)」などがあり、少量でも風味豊かな高濃度タイプとしてDIYユーザーやプロの間で根強い支持があります。また欧州を中心に国際的な展開を進め、カナダにも生産拠点を置くなどグローバル企業へ成長しています​。
  • Flavor West(フレーバーウエスト) – 米国カリフォルニアの家族経営の香料メーカーで、2012年創業と新興ながらウェブ上で最大級のフレーバー供給者を自称するほど豊富な品揃えを誇ります​

    ユニークで個性的なフレーバーが多く、たとえば「ユニコーン◯◯」や「ウーキークッキー」風味など独創的な香りでコアなファン層を獲得しています​。実際、有名なVAPEリキッド「Wookie Cookie」にも同社のフレーバーが使われており、その品質が裏付けられています​

    。Flavor Westは安価で入手しやすい大容量製品も提供しており、DIY入門者から上級者まで幅広く利用されています。ただし一部フレーバーに加糖成分(フルクトース)が含まれることが判明し議論になった経緯もあり​、成分開示については改善の余地が指摘されています。総じて、Flavor Westは安定した品質と斬新な風味で市場に独自のポジションを築いています

(※その他にも、ポーランドのInawera、米国のFlavorah、英国のVampire Vapeなど、多数の香料メーカーが存在しますが、上記は特にVAPE用途で世界的によく使われる主要ブランドです。一例として2018年の調査では、DIY向け香料ブランドのランキングでCapellaとTFAが上位を占め、FlavourArtやFlavor Westもトップクラスに挙げられています​。)

2. VAPE業界での香料使用状況と規制の影響・メーカーの対応策

VAPEリキッドにおける香料の重要性 – 電子タバコ(VAPE)のリキッドは、プロピレングリコール(PG)や植物性グリセリン(VG)、ニコチン(任意)に加え、香料(フレーバー)が味の決め手となります。フルーツ、デザート、メンソール、タバコ風味など多彩なフレーバーが市場を拡大させ、特に若年層や禁煙者にとっては「おいしい風味」が喫煙代替としてのVAPE普及に大きく寄与しました。しかしその一方で、フレーバーの魅力が未成年者を誘引するとの指摘から、各国規制当局はフレーバーリキッドに厳しい目を向けています。例えば米国FDAは2020年以降、ニコチンを含むフレーバー製品をタバコ製品とみなし、販売継続には有害性リスクと社会的利点のバランスについて厳格な審査(PMTA)を課しました​。その結果、100万点以上にも及ぶフレーバー付き電子タバコ製品の販売申請が拒絶され、市場から排除されています​。現在米国で法的に認可されたフレーバーリキッドは34種のみ(しかも風味はタバコまたはメンソールに限られる)という状況で​、実質的に甘味やフルーツ系のリキッドは合法市場から姿を消しました。このようにフレーバー規制の強化はVAPE業界に大きな影響を及ぼしています。

メーカー各社の対応策 – 厳しい規制環境に適応するため、香料メーカー各社も戦略を調整しています。まず製品安全性の向上では、2016年前後から問題視されたジアセチル等の含有を減らす取り組みが進みました。FlavourArtは前述の通り全製品でジアセチル・アセチルプロピオニル不使用を明言し​、TPAも人気フレーバーを見直したDXシリーズ(問題成分を除去した改良版)を投入しています​。Capellaもバニラカスタードなどクリーミー系でV2フォーミュラ(安全志向の改良版)を提供し、Flavor Westも含め各社がよりクリーンなレシピへ移行しました。次に法規制への対応では、香料を「あくまで食品/飲料用」と位置づけて販売する動きが顕著です。例えばCapellaは公式FAQで「当社の香料は食品・飲料用であり、電子タバコ用途は意図していない」と明記し、安全性や使用方法については案内できないとしています​。さらに再販業者にも「製品ページでVAPE用途であることを示さないように」と要請しており​、直接的にVAPE用途を謳うことを避ける姿勢です。このように法的リスクを回避するマーケティングに徹することで、規制当局の目を意識したビジネス継続を図っています。また各社は成分の開示と品質管理も強化しています。Flavor WestはMSDS(製品安全データ)を公開し法令順守をアピールしていますし​、TPAも香料ごとの成分情報を公開してユーザーやリキッドメーカーが安全性評価できるよう努めています(例:特定のロットでの成分検査証明書の提供など)。さらにFlavourArtはClearStreamプロジェクトと称する研究キャンペーンを主導し、自社フレーバーを使用した蒸気の細胞毒性試験や環境中排出物の分析を2012年頃から実施するなど​、科学的データの収集にも力を入れてきました。こうした安全研究への投資は規制当局や消費者への説明責任を果たす一助となっており、業界内で評価されています。

3. 香料メーカーの他分野への進出状況・多角化戦略

フレーバー業界では、VAPE用途だけでなく食品・日用品など他分野への多角化が進んでいます。主要香料メーカー各社も自社技術を応用し、以下のような新分野に展開しています。

  • 食品・飲料分野: 香料メーカーにとって元来主力だった市場です。たとえばCapellaは創業当初、コーヒーや紅茶に数滴垂らして風味付けする製品からスタートし​、その後ベーカリー、菓子、清涼飲料、醸造(クラフトビール)に使えるフレーバーへと拡大しました​。実際、サンディエゴのクラフトビールにCapellaの香料が使われている例もあり​、現在では世界60か国以上の食品メーカーに原料を供給しています​。TPA(Perfumer’s Apprentice)も食品安全基準を満たした濃縮香料を製造し、ベーキングやキャンディ、飲料(醸造所含む)でも利用できるとされています​。Flavor Westはキャンディ製造向けのフレーバーオイル抽出も手掛けており​、元々食品業界との親和性が高い会社です。こうした食品・飲料分野への展開は、規制に左右されにくい安定市場でもあり、各社の売上を支える重要な柱となっています。

  • 化粧品・フレグランス分野: 香料と香水・化粧品は隣接する領域であり、一部メーカーは香粧品原料も扱います。典型例がPerfumer’s Apprenticeで、社名の通り元々は2004年に調香師向けの香水用アロマ素材の販売から始まりました​。同社は後に食品グレードのフレーバー部門(Flavor Apprentice)を立ち上げVAPE市場に参入しましたが、現在でも香水用フレグランスオイルやアロマ化合物を販売し続けています。つまりフレーバーとフレグランスの二軸で事業展開しており、一つの製品開発が両分野に応用できる強みを持ちます。他の香料メーカーは直接化粧品原料は扱わないものの、自社の食用香料がリップクリームやアロマキャンドルなどに使われるケースもあります。例えばフレーバーアートの香料はグルテンフリー・ピーナッツフリーかつヴィーガン対応で、糖尿病患者向け食品にも適するとされ​、食品以外でもボディケア製品のフレーバー添加など応用範囲は広いです。総じて香料メーカー各社は**「マルチパーパス(多目的)フレーバー」**として食品・コスメ両面で使える製品設計を志向しており、市場の需要に合わせて販路を柔軟に拡大しています。

  • CBD・大麻関連分野: 近年隆盛のCBDオイルや合法大麻製品のフレーバー付与も、新たな市場として注目されています。VAPE用フレーバーの多くはPGベースで電子タバコ(ニコチンまたはTHCリキッド)に利用できますが、特に大麻のテルペンブレンド市場で動きがあります。Flavor Westは製品カテゴリに**「Terpenes(テルペン)」を設け、さまざまなカンナビス系フレーバーを発売しています​。またPerfumer’s Apprenticeも派生ブランド「The Flavored Herb」を通じてカンナビス由来テルペンのブレンドを販売開始し、Sunset Sherbetなど大麻の品種を模したフレーバーを展開しています​。実際、同社のフレーバーのうち約8割をVAPE業界向けに使っているとの報告もあり​、その中にはフレーバー付きの大麻エキス**(例:THCベイプカートリッジ)の風味付け需要も含まれています。さらにFlavor WestはPGではなく油溶性(OS)フレーバーも扱っており​、これは大麻エキス等のオイル製品に直接混ぜる用途を意識したものです。CBDグミやオーラル摂取のCBD製品向けには食品用香料がそのまま使われており、CapellaやTPAのフルーツフレーバーがCBDベースの苦味をマスキングするために添加されるケースもあります。総じて香料メーカーは**「グリーンラッシュ」**とも呼ばれる大麻関連市場にも乗り出し、従来のノウハウを新領域に活かす多角化を進めています。

  • その他の多角化戦略: 上記以外にも、各社は様々な戦略で収益源の多様化を図っています。例えばオンライン直販とグローバル展開です。Flavor Westは自社サイトで小口から大口まで直販し世界中に発送するモデルで成功し、「ウェブ上で最大のフレーバー供給元に成長した」と述べています​

    。FlavourArtは北米やドイツに現地法人を設立し、生産拠点もカナダに拡大することでローカル市場への供給体制を強化しています​。またニコチン製品との連携も見られ、FlavourArtはシーシャ(水タバコ)や加熱式タバコ向けの香料開発にも意欲を示しています​。同社は「タバコ製品のフレーバー開発におけるキープレーヤーになる」というビジョンを掲げており​、従来の紙巻たばこメーカーや加熱式デバイス企業との提携も示唆されています。さらに、一部の香料メーカーは完成品リキッド市場への進出も行っています。FlavourArtは自社ブランドのプレミックス電子タバコ液を10mlボトルで販売しており​、DIY向け濃縮香料だけでなく一般消費者向けリキッドも手掛けています。このように垂直統合的に事業領域を広げることで、新規ユーザーへの接点を増やす狙いがあります。最後に戦略的パートナーシップも多角化を後押ししています。Capellaは2013年に老舗香料メーカーAllen Flavors社と提携し、東海岸にも拠点を築くことで物流コスト削減と生産拡大を実現しました​。この提携により大手飲料会社への販路を獲得するなど事業拡大に成功しています。同様に、将来的には大手香料企業による買収や資本提携の可能性も指摘されており、業界再編含みで各社がポートフォリオを拡充している状況です。

4. VAPEリキッド市場との関係の変化(DIYリキッドのトレンド、プレミックス市場の変化)

  • DIYリキッド市場の台頭: 香料メーカーとVAPEリキッド市場の関係性で近年顕著なのは、DIY(自作)リキッドの隆盛です。規制強化や課税により市販フレーバーリキッドの入手が難しくなった地域では、ユーザー自身が香料とベース液を混ぜてリキッドを作る動きが広がっています。例えば日本ではニコチン入りリキッドの国内販売が禁止されているため、ユーザーは海外からニコチンベースを個人輸入し、市販の香料を加えてDIYするのが一般的です​。またEUでもニコチン濃度上限やボトル容量制限(TPD規制)のためショートフィルと呼ばれる方式が普及しました。これはニコチン無配合の大容量リキッド(香料入り)にユーザーが後からニコチンショットを添加する方式で、半DIYともいえる形態です。この結果、ユーザーが香料を扱う機会が増え、香料メーカー各社も一般消費者への直接販売に注力するようになりました。典型的なのがオンラインショップで、Bull City FlavorsやWizard Labs等の通販ではCapellaやTPAなど主要メーカーの香料小分け品が容易に購入できるようになっています。さらに近年は世界各地のVAPEショップが自作志向の顧客向けに香料を品揃えし、日本のCOCOKARAのようにDIY専門店が登場するなど​、DIY市場の整備が進みました。その結果、多くの熱心なユーザーコミュニティ(redditのr/DIY_eJuiceや各種フォーラム)がレシピ情報を共有し、人気レシピの拡散によって特定の香料の売上が急伸する現象も見られます。例えば「Mother’s Milk」クローンレシピが流行した際にはCapellaのストロベリーミルク系香料が品薄になる、といったことも起きました。各国の規制当局もDIY用の香料そのものは禁止しづらいため(食品用香料として販売されている限り規制対象外)、フレーバーバン(香料禁止)への対抗手段としてDIYは今後も支持されると見られています。実際、2023年にオランダがリキッドのフレーバー販売禁止措置をとった際も、「ベース液とニコチン、香料を買って自分で混ぜれば禁止の抜け道になる」とユーザー間で認識されており​

    、ショップ側も香料や無香料リキッドの販売を続けています​。このようにDIYトレンドの加速は香料メーカーにとって新たなビジネスチャンスであり、B2C販路の強化や小口包装製品の充実などが進んでいます。

  • プレミックス(完成品)リキッド市場の変化: 一方、既製品のVAPEリキッド市場との関係も大きく変化しました。2010年代半ばには多数の中小リキッドメーカーが乱立し、彼らはCapellaやTPA等の汎用香料をブレンドして独自の「プレミアムリキッド」を生産していました。香料メーカーにとって、こうしたリキッドメーカーは主要な顧客であり、大量発注により売上を牽引する存在でした。しかし近年の規制強化(特に米国FDAのPMTA制度)により、小規模リキッドメーカーの多くが市場撤退や廃業に追い込まれています。米国では2021年秋までにほぼ全てのフレーバーリキッド製品が販売不許可となり​、生き残ったのは巨大タバコ企業傘下の数ブランド(しかもタバコ味中心)のみという状態です。この結果、香料メーカーは従来のB2B需要の急減に直面しました。大量発注をしてくれた小規模メーカーが消え、残った大企業(例:JUULやVuse)は自社で専用開発した風味を使うか、大手香料会社と機密契約を結ぶことが多く、従来のオープンな香料ブランド(Capella等)の採用例は限定的です。つまり商業リキッド市場と汎用香料メーカーの結び付きは弱まったと言えます。一方で、前述のDIY市場拡大によりB2C売上が伸びているため、香料メーカー各社はこの分野で減った売上を他分野で補填している状況です。またEUではフレーバーリキッド自体は禁止されていないものの、タバコ製品指令(TPD)の施行後、リキッド各種の成分届出が義務化されました。これにより香料の成分情報開示が求められ、香料メーカーとリキッドメーカーの連携が必要になっています。例えばFlavourArt製香料のみで作ったリキッドを届け出る際、FlavourArtから提供された成分リストを当局に提出する必要があるため、メーカー間で情報共有が進みました。こうしたサプライチェーン上の協力は製品改良にも繋がり、市販リキッドに最適化した新フレーバー開発(コイル汚れしにくい甘味料への変更等)が行われるようになっています。さらに規制回避的な動きとして、ワンショット(一部完成品)販売も増えました。リキッドメーカーが自社人気リキッドと同じ香料ブレンド(ニコチン・PG/VGなし)を小瓶で売り、ユーザーがベースに混ぜるだけで再現できる商品です。これは実質的に香料ミックスの販売であり、多くの場合香料メーカーの既存製品を組み合わせて作られるため、香料メーカーにとっても新たな販売形態となっています。総じて、プレミックスリキッド市場が縮小・変質する中で、香料メーカーはDIYユーザーや周辺市場へ軸足を移しつつ、生き残った大手リキッド企業との協業やカスタムフレーバー提供などニッチなB2B機会も模索するようになっています。

5. 主要香料メーカーの今後の展望と業界の方向性

  • 規制環境への適応と安全性の追求: 今後も各国でフレーバー規制が議論されると見られる中、香料メーカーは規制適合と安全性の証明に注力していく展望です。FlavourArtは「卓越した品質と信頼性、価値を提供する国際企業として刺激的な未来が待っている」と述べ、パーソナルベイポライザー(電子タバコ)用リキッド開発においてキーとなる役割を果たす決意を示しています​。その言葉通り、同社はClearStream研究を拡充しつつ世界各国40か国以上で製品届け出を行い、最新の規制要件にも対応できる体制を強化しています​。他社も同様に、FDAやEUの基準に適合するための試験データや成分情報を整備し、「香料=危険」ではないことのエビデンス構築に努めるでしょう。またCapellaやTPAは既に食品グレードの品質管理を徹底していますが​、今後さらに医薬品GMP並みの管理や第三者認証の取得など品質保証の高度化が進む可能性があります。安全性に関しては、フレーバー成分個別の毒性評価研究が進展しつつあり、業界団体と協力して吸入適正のガイドライン策定にも関与していくと見られます。

  • 市場拡大・新市場の開拓: 地域的には、アジアや中東など新興市場でのVAPE普及に伴い香料需要が伸びる展望です。特に規制が比較的緩やかな国では多様なフレーバーが好まれるため、各社とも新興国市場の開拓を進めています。例えば中東ではシーシャ文化に着想を得たフレーバー(ローズ、カルダモンなど)が人気で、FlavourArtもシーシャ用アロマに注力すると表明しています​。また合法大麻市場の拡大も見据え、カンナビスフレーバー分野で先行する動きがあります。北米を中心に大麻由来テルペンブレンドの需要が急増しており、Flavor WestやTPAなどはこの分野で早期にブランドを確立しました​。CBD製品向けのフレーバーも今後さらなる成長が予測されます。加えて、ニコチン代替品(ニコチン塩パウチ、加熱式タバコ等)にも香料は欠かせず、たとえばニコチンパウチのミント味やベリー味等には食品香料が使われています。香料メーカーはこうした隣接市場にも製品を供給し、総合的なフレーバー企業として市場規模を拡大していくでしょう。

  • 技術革新と製品トレンド: フレーバーのトレンド自体も進化が見込まれます。2020年代に入り、超高濃度フレーバー甘味料改良がキーワードとなっています。FlavorahのようにVAPE専用設計で濃度が高く雑味の少ない香料も登場し始めており、他社もより低添加率で鮮明に風味を出せる香料の開発を進めるでしょう。またクーラント成分(WS-23など)の人気上昇に合わせ、清涼感を強化したフレーバーや、ハーブ・フローラル系など新しいカテゴリーの展開も考えられます​

    。実際、一部メーカーはラベンダーやカモミールといったフローラルフレーバーを製品化し始めています​。さらに、合成生物学の進歩によって天然由来に近い香料化合物を発酵法で生産する技術も登場しており、将来的に「よりナチュラルで安全な香料」を売りにする動きも出てくるかもしれません。ユーザーの嗜好変化にも注目しており、昨今の使い捨てVapeの台頭では極甘フルーツブレンドがヒットしていますが​、飽和した甘味トレンドの次を見据えて各社とも新奇性のある風味を模索しています。例として、タバコとフルーツのハイブリッドや、発酵飲料風味(コンブチャ風味など)といった実験的フレーバーの試作も進んでいます。香料メーカーは今後も消費者の求める味覚体験を追求し、定番フレーバーの改良と新フレーバーの開発によって市場をリードしていくでしょう。
  • 業界再編とビジネスモデルの変化: 規模拡大や規制対応に伴い、業界構造にも変化が予想されます。まず考えられるのが業界再編(M&A)です。グローバル香料大手(GivaudanやIFFなど)は食品香料市場を寡占していますが、VAPE向けに特化した中小メーカーの台頭を注視しています。既に2013年にCapellaがAllen Flavorsと戦略提携したように​、大手の資本・ノウハウと中小の機動力を組み合わせる動きがありました。今後、規制対応や研究開発に莫大な投資が必要となれば、中小香料メーカー同士の合併や大手による買収が起こる可能性があります。例えば「大手タバコ会社が香料メーカーを買収して傘下に収め、自社製品向けフレーバーを内製化する」といったシナリオも否定できません。一方で、インターネット直販によりニッチ市場でも収益を上げられるビジネスモデルが確立されつつあるため、従来にない新興企業の参入も起こり得ます。例えば中国やロシアなどで地場の香料メーカーが台頭し、独自のフレーバーで国産リキッド市場を奪うことも考えられます。既存メーカーにとっては油断できない状況ですが、先行者利益と長年のブランド力は依然強みです。TPAは「世界で最も信頼されるフレーバーブランド」の一つとして揺るぎない地位を築いており​、Flavor Westも「業界最高であることにフォーカスし続けている」と宣言しています​

    既存トップメーカーは柔軟に戦略を変えつつも、その地位を維持・強化していく見通しです。総合的に見て、主要香料メーカーの今後は「規制への適応」「多角化による安定化」「技術革新による差別化」の三本柱が方向性となり、VAPEを含む幅広い市場でフレーバーによる価値提供を拡大していくと考えられます。

以上のように、CapellaやTPA、Flavor West、FlavourArtといった主要香料メーカーの現状と市場動向を概観しました。各社ともVAPE市場で培った知名度とノウハウを武器にしつつ、規制に翻弄されない強靭なビジネスモデルへの転換を図っています。DIY需要や新興分野への進出により事業機会はなお広がっており、最新の業界トレンドとしては安全・法令順守を重視した製品開発や、他分野とのクロスオーバーがキーワードとなっています。今後もユーザーの嗜好変化や法規制動向に目を配りながら、香料メーカー各社は革新を続けていくでしょう。その動向はVAPEリキッド市場のみならず、食品や嗜好品産業全体に影響を与える可能性があり、引き続き注視が必要です。

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