VAPE リキッドメーカーの歴史 綺羅星のように現れ散っていったリキッドブランド達

VAPEのリキッド業界は、まさに戦国時代だった!乱立するブランド、次々と消えていくメーカー…。その歴史をさらに詳しく振り返ってみましょう。2010年代から2025年現在まで、VAPEリキッド市場の激動の変遷を徹底解説します!今回は地域別のブランドやリキッドのジャンル分類など、熱量高く盛りだくさんでお届けします。あなたの知っているあのブランドは登場するでしょうか?それではスタートです。

目次

黎明期(2010年代前半)~始まりの時代~

まずは黎明期、2010年代前半です。まだVAPEが一般に広まり始めたばかりのこの時期、リキッド市場も手探り状態でした。電子タバコ自体は2000年代後半に中国で誕生し、そこから欧米に伝わってきました。当時は「タバコ味」や「メンソール味」のリキッドが中心で、まさに「電子タバコ=タバコ風味で禁煙補助」のような位置付けでした。

この黎明期に登場した代表的なリキッドメーカーを見てみましょう。まずアメリカでは、黎明期を支えた老舗ブランドがいくつもあります。たとえば**Johnson Creek(ジョンソンクリーク)は2008年創業の米国初期のリキッドメーカーで、「スモークジュース」と呼ばれるタバコ風味リキッドを販売し、多くの初心者を支えました。続いてHalo(ヘイロー)は2009年前後から登場し、有名なタバコ系フレーバー「Tribeca(トリベカ)」で人気を博しました。Tribeccaはカラメルとバニラが香るRY4系(※RY4=キャラメルバニラタバコ風味の元祖的フレーバー)で、「これぞ電子タバコの定番!」という存在でした。またHaloは強烈メンソールの「SubZero(サブゼロ)」**も有名で、メンソール愛好家にカルト的人気を誇りました。

さらに**Five Pawns(ファイブポーンズ)も黎明期の象徴的ブランドです。2012~2013年頃に米カリフォルニアで誕生し、チェスの駒をモチーフにした高級路線のリキッドを展開しました。代表作の「Castle Long(キャッスルロング)」はバーボンにココナッツやアーモンド、バニラを合わせた大人のデザート風味で、「電子タバコにもこんな贅沢な味があるのか!」と衝撃を与えました。このようにFive Pawnsはリキッドを単なる禁煙ツールから“嗜好品”**へと引き上げたパイオニアと言えます。

他にも**Space Jam(スペースジャム)も2012年創業のアメリカブランドで、宇宙をテーマにしたユニークな名前とパッケージが特徴でした。ベリーとクリームの「Andromeda(アンドロメダ)」や、青りんごとイチゴの「Astro(アストロ)」**などが人気で、「宇宙から降臨した旨さ」なんてキャッチコピーに胸を躍らせたものです。当時を知るVaperなら、このSpace Jamのボトルデザインに懐かしさを感じるでしょう。

一方、ヨーロッパでも2010年代前半には徐々に国産リキッドが現れ始めました。イギリスでは**Totally Wicked(トータリーウィキッド)などが早くからeリキッド販売に乗り出し、またT-Juice(ティージュース)は2012年設立の英国メーカーで、後に伝説的フレーバー「Red Astaire(レッドアスター)」を生み出すことになります(このフレーバーについては後ほど詳しく)。フランスでもAlfaliquid(アルファリキッド)**などが創業し、欧州の市場を開拓していきました。ただし欧州黎明期も基本はタバコ系が主流で、派手なフレーバーはまだ少なめでした。

さらに日本アジアにも目を向けてみましょう。日本では2013~2014年頃から少しずつ国産リキッドメーカーが誕生します。例えば**BI-SO(ビソー)は日本初期のリキッドメーカーの一つで、国産ならではの繊細なフレーバーづくりを始めました。またKAMIKAZE E-JUICE(カミカゼ)**も登場し、「抹茶ラテ」「エナジードリンク味」などユニークなフレーバーで国内Vaperの注目を集めました。ただ、日本ではニコチン入りリキッドの製造販売ができない規制があるため(ニコチンは個人輸入に限られる)、国内メーカーは基本ノンニコチンリキッドです。そのため市場規模は欧米に比べ小さいながらも、着実にファンを増やしていきました。

アジアでは他に中国のリキッドメーカーも黎明期から存在感があります。**Dekang(デカン)Hangsen(ハンセン)**といった中国の大手は、世界中に安価なリキッドを供給し、初期の電子タバコ普及に大きく貢献しました。実際、多くのVaperが初めて吸ったリキッドは中国産のタバコ味だった…なんてことも珍しくありません。

黎明期はこのようにタバコ系・メンソール系が市場の中心でした。言い換えれば「リアルたばこの代替」を目指した味が多かったのです。もちろん中にはフルーツ味やコーヒー味などもありましたが、今と比べると味のバリエーションはかなり限られていました。しかし、この時期に各地で生まれたブランドたちが、後の爆発的発展の土台を築いていったのです。

黄金期(2015~2018年)~ブームと群雄割拠~

2015年から2018年頃は、まさにVAPEリキッド業界の黄金期でした。世界的にVAPE人口が急増し、新しいメーカーが雨後の筍のように現れ、毎週のように新作リキッドがリリースされる夢のような時代だったのです。この時期は各社が創意工夫を凝らしたユニークなフレーバーを次々と打ち出し、まさに群雄割拠の戦国絵巻状態でした。

まずアメリカの黄金期を彩ったブランドから紹介します。**Cuttwood(カットウッド)は2014年創業のLA発プレミアムブランドで、代表作の「Unicorn Milk(ユニコーンミルク)」はイチゴミルクシェイク味として大ヒットしました。甘く濃厚なストロベリークリーム系リキッドの代名詞となり、世界中のVaperが熱狂した名作です(後ほどの「カルト的人気リキッド紹介」でも触れます)。同じくストロベリー系ではSuicide Bunny(スーサイドバニー)「Mother’s Milk(マザーズミルク)」**も欠かせません。2014年前後に登場したこのリキッドはカスタードとストロベリーの組合せで、「母のミルク」の名の通り優しくやみつきになる味わいだと評判になりました。

フルーツ系やデザート系の想像力豊かなブレンドも台頭しました。**Cosmic Fog(コスミックフォグ)は2013年に米国で設立され、「ミルク&ハニー」(シリアルにマシュマロと蜂蜜のような風味)や「クレマ(バニラクリーム)」など、デザート×フルーツのリッチな組合せで人気を博しました。またRuthless(ルースレス)は大容量ボトルで知られるブランドで、スイカとイチゴの爽快フルーツミックス「EZ Duz It」やぶどうソーダ味の「Grape Drank」**など、シンプルながら病みつきになるフルーツ味を展開。120mlといった大きなボトルで惜しみなく使えることから、多くのクラウドチェイサー(爆煙好き)に愛用されました。

One Hit Wonder(ワンヒットワンダー)も2015年に登場したユニークなブランドです。180mlという特大サイズのボトルに入れて販売し、「Muffin Man(マフィンマン)」(シナモンアップルマフィン味)や**「Milk Man(ミルクマン)」**(イチゴミルク味)などインパクトのある名前と味で話題をさらいました。「一発屋」というブランド名に反し、次々ヒットを飛ばしたのも面白いところです。

そして忘れてはならないのが**Naked 100(ネイキッド100)です。2016年頃に米国でリリースされたこのシリーズは、ピュアなフルーツミックスを得意とし、例えばパッションフルーツ・オレンジ・グァバを合わせた「Hawaiian POG(ハワイアンポグ)」や、ストロベリー・パイナップル・ココナッツの「Lava Flow(ラヴァフロー)」**など、南国トロピカルな組合せが世界的に大ヒットしました。ネイキッド100の魅力は、シンプルで飽きのこないフルーツ味とスタイリッシュなボトルデザインで、この時期あらゆるショップで目にする定番ブランドとなりました。

またElement E-Liquid(エレメント)も2014年創業の米フロリダ発ブランドで、高VG(グリセリン比率高め)でドリッパー(RDA)向けに調合された濃厚フレーバーが特徴でした。中でもレモネード系の**「Pink Lemonade(ピンクレモネード)」は爽やかな甘酸っぱさで人気を博し、他にもクリーミーな「Crema(クレマ)」**やタバコバニラの「555」など、多彩なラインナップを展開しました。

このようにアメリカでは多種多様なブランドが乱立し、それぞれデザート系フルーツ系シリアル(シリアル朝食)系キャンディ系など独自のコンセプトで勝負するようになりました。黎明期には脇役だったデザート系リキッドが、この黄金期には一気に主役に躍り出たのです。バニラカスタードやケーキ、シリアル牛乳味といった「甘いお菓子系リキッド」は特にブームとなり、世界中のVaperを虜にしました。

次にヨーロッパに目を向けると、こちらも負けず劣らず個性的なブランドが多数登場しました。中でもイギリス発の**Dinner Lady(ディナー・レディ)は2016年に登場すると瞬く間にスターダムにのし上がりました。看板フレーバーの「Lemon Tart(レモンタルト)」**はレモンカードの酸味とメレンゲ、パイ生地の甘さが見事に調和したまるで本物のスイーツのような味わいで、「史上最高のデザートリキッド」と称賛されました。Dinner Ladyは他にも「Rice Pudding(ライスプディング)」や「Berry Tart」など英国伝統菓子をモチーフにしたラインナップで、2016~17年のアワードを総なめにしています。

同じく英国では**Charlie’s Chalk Dust(チャーリーズ チョークダスト)も2015年創業ながら大人気となりました。黒板に書いたようなおしゃれパッケージが目印で、「Dream Cream」やキャンプファイヤーで焼いたお菓子を再現した「Campfire(キャンプファイヤー)」など遊び心あるフレーバーが特徴です。またCharlie’s Chalk Dustは果物系ブランド「Pacha Mama(パチャママ)」シリーズも展開し、「Fuji Apple Strawberry Nectarine(フジアップルストロベリーネクタリン)」**などフルーツ同士の斬新な組み合わせでヒットを飛ばしました。

Vampire Vape(ヴァンパイアベイプ)も英国を代表するブランドです。2013年に創業し、「Heisenberg(ハイゼンベルク)」という伝説的フレーバーを生み出しました。鮮やかな青色のリキッドでベリー系フルーツと強メンソールがミステリアスに調和した味は「一度吸ったら忘れられない」と口コミで広がり、ヨーロッパ中でカルト的人気に。もう一つの人気作「Pinkman(ピンクマン)」(グレープフルーツ味のピンク色リキッド)と合わせ、Vampire Vapeは英国リキッドシーンの象徴的存在となりました。

さらにIVG(アイ・ブイ・ジー)やRiot Squad(ライオットスクワッド)といった英国発ブランドも2016年前後から登場しています。IVGはキャンディやソーダ系のポップなフレーバー(例:「Bubblegum Millions」ガム味や「Cola Ice」コーラ味など)で若い世代に人気を博し、Riot Squadは弾丸型のボトルに入った攻撃的デザインで「Pink Grenade」(ピンクレモネード味)など話題性抜群の展開をしました。

フランスや他の欧州諸国でもこの頃盛り上がりを見せており、フランスの**Liquideo(リキデオ)やイタリア発のLIQUA(リクア)**など多様なブランドがヨーロッパ中で販売されました。ヨーロッパ市場は後述するTPD規制でボトルサイズなどの制限はあったものの、ショートフィル(大容量ニコチン無しリキッドに後からニコチンを足す方式)など工夫が生まれ、たくさんのブランドが各国のVaperに受け入れられていきました。

続いてアジアでは、特にマレーシアが黄金期に台頭してきます。マレーシア発のNasty Juice(ナスティジュース)は2015年創業ながら瞬く間に世界的ブランドとなりました。特徴は極甘フルーツに清涼感(薄荷)を加えた南国風味で、マンゴー味の**「Cush Man(クッシュマン)」**やイチゴ味の「Trap Queen」、パイナップルとレモネードの「Slow Blow」などが代表作です。缶に入った派手なパッケージデザインと強烈な甘さ・清涼感で「これはジュースなのか!?」と衝撃を与え、マレーシア=甘くて冷たいフルーツリキッドの聖地というイメージを確立しました。

またHorny Flava(ホーニーフレーバ)も有名なマレーシアブランドで、「Horny Mango(ホーニーマンゴー)」に代表される濃厚フルーツ系が人気です。名前のインパクトも相まって口コミが広がりました。そのほかFcukin’ Flava(ファッキンフレーバ)(少々過激な名前ですが…)も2014年創業で、ハチミツメロン+清涼剤の**「Fcukin Munkey」**やパイナップル+清涼剤の「Freezy Pineapple」など、やはり甘く冷たいシリーズでファンを獲得しました。Cloud Niners(クラウドナイナーズ)やMonsta Vape(モンスタベイプ)といったブランドも現地で次々登場し、どれもフルーツ&メンソールのパンチが効いたリキッドを展開しています。こうしたマレーシアリキッドの流行は世界に波及し、「他の国のブランドもマレーシア風の甘くて清涼感あるフルーツ味を出す」という現象まで起きたほどです。

中東地域に目を向けると、この黄金期に徐々に湾岸諸国でもVAPE文化が浸透し始めました。ドバイなどでは輸入品のリキッドが広く使われるようになり、マレーシアやアメリカ、イギリスの有名ブランドが市場を席巻しました。その中で地元UAE発のブランドも誕生し始めます。例えばドバイ拠点のVape Monkey DubaiMedusa Juice(メデューサジュース)といった名前が知られるようになりました(Medusa Juiceはマレーシア発との説もありますが、ドバイでも人気)。中東の嗜好に合わせ、シーシャ(水タバコ)風のフレーバー、例えばダブルアップル(青リンゴ+赤リンゴ)やブドウミントのような伝統的シーシャフレーバーを再現したリキッドも登場しました。中東ではニコチン塩リキッドを高出力デバイスで嗜むスタイルも広がり、地域独自のリキッド文化が芽生えつつあったのです。

総じて2015~2018年は、世界中で大小無数のリキッドブランドが乱立した時代でした。各地域で特色あるメーカーが生まれ、フレーバーのジャンルもタバコ・メンソール一辺倒から、フルーツ、デザート、飲料系、さらには複雑な複合系まで一気に広がりました。リキッドの多様化が進み、毎月「次はどんな革新的フレーバーが出るのか?」とVaper達が胸を躍らせていたのです。この活況ぶりに、「この時期はまさに夢のような時代だった…」と当時を懐かしむ声が今でも聞かれるほどです。

ジャンル別リキッドの多様化

黄金期にはリキッドの**ジャンル(味の系統)**も飛躍的に細分化されました。ここで一旦、主なジャンルごとに代表例を挙げてみましょう。

  • タバコ系: リキッド創成期からある定番ジャンル。リアルなたばこの風味や葉巻風味を再現します。例としては前述の**Halo「Tribeca」や、自然な葉たばこエキスを使ったBlack Note(ブラックノート)**シリーズなどが有名です。禁煙目的のユーザーに根強い人気があり、「やっぱり最初はタバコ味じゃないと」という声も多いジャンルです。

  • メンソール/清涼系: メンソールや清涼剤によるスースー感を特徴とするジャンル。純粋メンソールのHalo「SubZero」や、メンソール+フルーツの走りとなったT-Juice「Red Astaire」(ベリー+アニス+メンソール)などが代表です。喉にガツンとくる清涼感は一度ハマるとやめられない魅力で、暑い時期や気分転換にも好まれます。

  • フルーツ系: 文字通りフルーツの味を再現したリキッド。シンプルな単一果物から複数を混ぜたカクテル風まで種類は様々です。例としてNaked 100の各種トロピカルミックス(マンゴー、ベリー、シトラスなど)や、Twelve Monkeys(トゥエルブモンキーズ)の「Tropika」(南国フルーツミックス)などが挙げられます。爽やかで吸いやすいため初心者からベテランまで幅広く人気のジャンルです。

  • デザート/スイーツ系: ケーキやクリーム、キャンディなど甘いお菓子系の風味。2015年前後から大ブームとなりました。代表格はDinner Lady「Lemon Tart」やSuicide Bunny「Mother’s Milk」、さらにはKings Crest「Don Juan Reserve」(チョコレートピーカンパイ味)など、まるでスイーツを食べているかのような濃厚な味わいが楽しめます。甘党のVaperにはたまらないジャンルですが、甘さゆえにコイルが汚れやすいという贅沢な悩みも…。

  • 飲料系: コーラやエナジードリンク、コーヒー、紅茶など飲み物を模したジャンル。例えばMonster Energy味のリキッドや、コーラ味+氷の清涼剤を加えた**「コーラアイス」、さらには「カフェラテ」**風味のものまで多彩です。中にはアルコール飲料系(ラムコーク味やビール味!)なんて変わり種も登場しました。ネタ的な面白さもあり話題になるジャンルです。

  • ニコチンソルト系: 2017年頃から登場した新しいカテゴリーです。ジュル(JUUL)の登場で注目されたニコチンソルトを使用したリキッドは、従来のニコチン(塩基型)よりも高濃度でもマイルドな吸い心地が特徴。小型PODデバイスでも高い満足感が得られるため、急速に普及しました。各ブランドが人気フレーバーのニコチンソルト版を発売し、例えばNaked 100 SaltシリーズやDinner Lady Saltシリーズなどがあります。基本的なフレーバーの傾向はフリーベース(従来)と同じですが、高ニコチンゆえにタバコ系やメンソール系、シンプルなフルーツ系が特に好まれる傾向があります(複雑なデザート味は高ニコチンだとクドすぎるため)。

  • CBDリキッド: ニコチンではなくCBD(カンナビジオール)を含有したリキッドも2018年頃から市場に登場しました。健康志向やリラックス目的で使用されるもので、THCを含まないので酩酊効果はありません。フレーバー自体はいちごやミントなど一般的なものにCBD成分を加えた形ですが、ニコチンリキッドとはまた別の層に支持されています。例としてCBDfxKoi CBDなど海外ブランドがあり、日本でも合法の範囲で輸入・販売され始めています。

このように黄金期にはリキッドの味のジャンルが細分化され、「あなたは何系が好き?」と話題になるほど豊富な選択肢が生まれました。自分の好みの味を探す楽しみが広がったのもこの時期ですね。

競争の激化と淘汰(2018~2022年)~嵐の時代~

華やかな黄金期の後、2018年以降リキッド業界は一転して試練の時代を迎えます。各国で規制が強化され、乱立したメーカーの生き残りを賭けたサバイバルが始まったのです。「あの有名ブランドが次々と消えていく…!」という事態に、多くのVaperが衝撃を受けました。

まずアメリカでは、2016年にFDA(食品医薬品局)の新規則が発表され、2018年8月以降「新たな製品(リキッド含む)は販売できない」、そして既存製品も**2020年までにPMTA(販売認可申請)**を提出し承認されなければ販売継続できないという厳しい規制が敷かれました。【PMTA:Premarket Tobacco Application】は1製品あたり膨大な資料と費用(数百万ドルとも)を要するため、中小のリキッドメーカーには到底クリアできないハードルでした。その結果、2020年9月のPMTA期限を前に多くの米国メーカーが自主廃業や撤退を余儀なくされたのです。

例えば黎明期から活躍したJohnson Creekは2017年に早くも経営難から閉鎖。さらに黄金期を牽引したSpace Jamも2019年に生産終了し、その在庫がファンに惜しまれつつ売り切れるという幕切れとなりました。またネット通販で人気だった**Vape Wild(ベイプワイルド)も、2020年に規制の見通しが立たない中で閉店を決断しています。他にもMount Baker Vapor(マウントベイカー)**は一時期アメリカの格安リキッドとして世界中に出荷していましたが、規制強化後はブランドを売却し、現在は名前を聞くことが少なくなりました。

「え、あの有名ブランドももう無いの?」と驚くケースが相次ぎました。巨大市場だったアメリカでの淘汰は特に激しく、数百社とも言われたリキッドメーカーが一気に数社規模にまで減少したとも言われます。生き残ったのは一部の大手や資本力のある企業のみ。例えばHaloを展開するNicopure Labsは大手たばこ企業の支援もありいくつかのフレーバーでPMTA提出を行いました(※ただし承認されたのはタバコ味など一部のみ)。Naked 100もブランド継続はしていますが、米国内ではフレーバー制限を受けつつ、主戦場を海外市場に移しています。Five Pawnsなども依然ブランドは存続していますが、ラインナップを絞り込み、ニコチン塩版を投入するなど変化に対応しています。

ヨーロッパでも2016年に施行されたTPD(タバコ製品指令)により、一部規制強化がありました。TPDではニコチン含有リキッドを10ml以上のボトルで販売禁止、ニコチン濃度20mg/ml以下などのルールが課され、派手な宣伝も制限されました。ただアメリカほど参入障壁が高かったわけではなく、既存メーカーの多くは製品をTPD準拠に切り替えて営業を続けました。それでも各国の税制強化(例えばリキッドへの課税)や販売規制でマーケットの伸びが鈍化し、小規模メーカーの中には撤退するところも出ました。例えばEU諸国の小さなハンドメイドリキッド業者などは数を減らしたようです。

また2019年頃からは世界的に「ティーンの電子タバコ使用」や「フレーバーによる若者誘引」への懸念が高まり、フレーバーリキッド禁止の動きも広がりました。米国では州レベルでフレーバー禁止法が成立する例(例:サンフランシスコ市やマサチューセッツ州など)や、連邦政府も2020年に使い捨て型PODデバイスのフレーバー(タバコとメンソール以外)を禁止する措置を取っています。カナダやオーストラリアでもフレーバー規制やニコチン濃度制限が強まり、市場に影響を与えました。インドに至っては2019年に電子タバコ製品自体を全面禁止にする極端な例もありました。

このような規制の嵐にさらされ、2018~2022年の間にリキッドメーカーは急速に淘汰が進みました。しかしそんな中でも生き残り続けたブランドがあります。彼らにはいくつか共通点が見られます。

一つは柔軟な適応力です。例えばDinner Ladyはフレーバーリキッドで成功した後、いち早くニコチンソルト版や使い捨てVAPEデバイス(ディスポーザブル)に参入しました。伝統のレモンタルト味をニコチンソルト化してPOD向けに提供したり、自社の名を冠した使い捨て電子タバコを発売することで、新たな需要を取り込んだのです。Nasty Juiceも同様に、通常のリキッドのみならずNasty Salt(ナスティのニコチン塩シリーズ)や使い捨てペン型デバイス**「Nasty Fix」を展開し、市場環境の変化に対応しています。つまり「リキッドが売れないならデバイスごと売る」**という転換ですね。

二つ目はグローバル展開です。規制が厳しい地域ではなく比較的緩い地域にマーケットを求めた例もあります。例えばアメリカで撤退を余儀なくされたブランドがEUやアジアでライセンス生産して販売を継続するといった動きです。CuttwoodCharlie’s Chalk Dustなどは欧州や他地域では今も根強い人気がありますし、米国から拠点を移して海外専売に切り替えたブランドもあります。資本提携や買収も進み、大手たばこ会社が海外向けブランドとして買い取ったケース(例:英インペリアル社による一部米リキッドブランド買収など)も報じられました。

三つ目は独自性と品質の追求です。淘汰の中でも熱狂的ファンに支えられたブランドは生き残りました。例えばFive Pawnsは高価格でも品質と独特の味わいにファンがお金を惜しまなかったため、今も存続しています。またBlack Noteのように「天然抽出タバコフレーバー一筋」という独自路線でコアな需要を掴んだブランドもあります。さらにDIY(自作リキッド)市場向けに転換したところもありました。FlavorArt(伊)やCapella(米)等は元々香料メーカーですが、既成リキッドからDIY用フレーバー販売に注力し、そちらで業績を伸ばした例です。

対照的に消えていったブランドは、差別化が難しく競争に埋もれたケースや、規制対応力・資本力が不足したケースが多いようです。味が似通ったブランドが乱立した結果、「美味しいけど他にも同じようなのがあるよね」と選ばれなくなってしまったり、小さな工房的メーカーでは当局への登録や申請が立ち行かず泣く泣く閉鎖…といった具合です。また一部では品質管理の問題(成分に関するトラブル等)で信頼を失い撤退した例もあります。2015年頃に話題となったジアセチル問題では、ある高級リキッドから有害とされるジアセチルが検出され炎上、以後業界全体で成分管理が厳しくなりましたが、この波に乗り遅れたメーカーは信用を失って淘汰されたりもしました。

日本に目を転じると、この期間、日本国内のリキッドメーカーは細々とではありますが生き残りを続けています。ニコチン規制という環境は変わらないものの、一部ブランド(例:MK Labの和風フレーバーシリーズやSNOWFREAKSなど)は海外輸出も視野に入れながら営業を継続しています。ただし日本市場全体としては、愛好家は限られ、大半のユーザーは海外製リキッドを個人輸入して使っているのが実情で、国内メーカーの成長は限定的でした。

一方、マレーシアや中東ではこの2018~2022年も比較的多くのブランドが活動を続けました。マレーシアは自国でニコチンリキッド販売がグレーゾーンであったにも関わらず、輸出産業としてリキッド生産が盛んでした。しかし近年マレーシア政府も電子タバコ産業への規制と課税を検討し始めており、将来はわかりません。中東は2019年頃にUAEがVAPEを合法化するなど市場が拡大しましたが、一部の国ではまだ規制が不透明なところもあり、海外メーカーが参入しづらい面もあります。そのため、**ドバイなどでは地元調合のクローンリキッド(有名フレーバーを真似た自家製)**が出回る例も見られ、正式ブランドと非公式品が混在する状況も生まれていました。

現在と未来(2023~2025年)~変容する市場~

そして2023年から現在にかけて、VAPEリキッド市場はさらに新たな局面に入っています。最大のトレンドは、PODシステムや使い捨てVAPEデバイスの大普及です。コンビニでも手に入る手軽な使い捨て電子タバコや、小型カートリッジ式のPODデバイスが、新規ユーザーを中心に爆発的に広がりました。

この流れによって、従来のボトル入りリキッドを販売するビジネスは大きな影響を受けています。新規のライトユーザーはボトルリキッドを買って自分でデバイスに入れるのではなく、最初から味付きカートリッジや使い捨てを使うため、リキッド単体の売上が伸びにくい状況になっているのです。特にアメリカでは、JUUL以降Puff BarやElf Barなど使い捨て製品が若年層に広まり、ボトルリキッド市場はマニア層中心になりつつあります。

この変化に対応するため、先述の生き残りブランドたちは自社で使い捨てデバイスを展開したり、他社と提携してカートリッジ用リキッドを供給したりしています。例を挙げれば、Dinner LadyやNasty、また米国のBARズームで知られる7Daze(ゼブンデイズ、リンゴ味「Red’s Apple」で有名)なども、使い捨てペン型VAPEを発売しています。リキッドメーカーが**「デバイスメーカー」や「総合ブランド」**へと変貌しているとも言えるでしょう。

しかし同時に、従来型のオープンシステム(リキッドを入れて使うVAPE)を愛する層は今も存在し、そこに向けたリキッド開発も続いています。直近では、合成ニコチン(タバコ由来ではなく人工合成したニコチン)を使ったリキッドが米国で登場したり(*もっとも2022年に法律でこれもタバコ製品扱いとなりましたが)、また超高濃度ニコチン塩(50mg以上)を含む使い捨てデバイスが各国で問題視されるなど、新たな課題も出ています。市場としては、厳しい規制下で残った大手ブランドとディストリビューターが寡占化を進めつつ、一方でニッチな需要(特殊な味や高級志向)を狙う小規模職人系が細々と活動するという二極化が進んでいる印象です。

また、リキッド業界の周辺ではDIYユーザーの存在感も続いています。好きなフレーバーの濃縮香料とベース液を買って自作する人々ですね。規制で買えなくなった味を自分で再現する動きも活発化し、レシピサイトでは往年の名作リキッドのクローンレシピが飛び交っています。メーカーも自社フレーバーの香料を売り出すなど、ユーザー参加型の市場も広がりを見せています。

2025年現在、VAPEリキッド業界は一見すると落ち着いたようにも見えますが、依然として外部環境(規制や世論)との戦い新技術への対応が続いています。今後、例えば全世界的な規制統一や医療用途での認可などが進めば、市場は再び大きく姿を変える可能性もあります。あるいは新しい嗜好品(加熱式たばこや他の代替品)の台頭でさらにニッチ化するかもしれません。

いずれにせよ、「吸うリキッド」である以上、人々の嗜好と社会のルールに常に影響されるのがこの業界と言えます。だからこそ生き残ったメーカーは常に時代の波を読み、自ら変わり続けているのです。

地域別のVAPEリキッドブランド勢力図

ここで改めて、世界の地域別に主なVAPEリキッドブランドを整理してみましょう。それぞれの地域で特色あるブランドが活躍しており、地域ごとの嗜好や規制の違いも垣間見えます。

▼アメリカ(北米): やはり最大のリキッド市場であり、多数のブランドが誕生しました。代表的なブランドとしては、

  • Five Pawns(ファイブポーンズ) – プレミアム路線の草分け的存在。複雑でリッチなフレーバーで高級リキッド市場を開拓。
  • Halo(ヘイロー) – タバコ系・メンソール系の定番ブランド。禁煙目的のユーザーから圧倒的支持。
  • Naked 100(ネイキッド100) – シンプルなフルーツミックスで世界的人気となったモダンブランド。
  • Cuttwood(カットウッド) – スイーツ系フレーバーで一世を風靡。ユニコーンミルクは今も語り草。
  • Suicide Bunny(スーサイドバニー) – プレミアムデザートの先駆け。Mother’s Milkで熱狂的ファンを獲得。
  • Cosmic Fog(コスミックフォグ) – 多彩なラインナップで一時代を築いた人気ブランド。
  • Ruthless(ルースレス) – 大容量ボトルとフルーツ系で米国内外にファン多数。
  • Element(エレメント) – 高VGで濃厚フレーバーを展開しドリッパー愛好家に支持。
  • Charlie’s Chalk Dust(チャーリーズ チョークダスト) – オシャレなブランディングとユニーク風味でヒット連発。
  • Mt Baker Vapor(マウントベイカー) – 低価格カスタムリキッドの草分け(現在は縮小)。
  • Black Note(ブラックノート) – NET(天然抽出タバコ)リキッド専門で大人のVaperに人気。
  • **Dinner Lady(ディナー・レディ)Nasty Juice(ナスティ)**など海外ブランドも米国市場に進出し存在感を示しています(規制前は多くの輸入リキッドが店頭に並んでいました)。

現在の米国市場は、規制により大手数社+輸入(非合法含む)品という形になりつつあります。伝統的ブランドではJohnson CreekSpace JamVape Wildなどが既に姿を消し、残ったブランドも海外市場を主力にするなど、生き残り策を模索しています。

▼ヨーロッパ(イギリス・EU諸国): 欧州は国ごとに特色がありますが、TPDにより共通のルールもあります。著名ブランドはイギリス発が多いです。

  • Dinner Lady(ディナー・レディ) – 英国。レモンタルトで一躍有名になったデザート系王者。今や世界展開。
  • Vampire Vape(ヴァンパイアベイプ) – 英国。HeisenbergとPinkmanという二大看板フレーバーで欧州中のVaperに愛される老舗。
  • T-Juice(ティージュース) – 英国。Red Astaireなど伝説フレーバーを持つパイオニア。
  • IVG(アイブイジー) – 英国。ポップなキャンディ・ドリンク系で若年層中心に人気。
  • Riot Squad(ライオットスクワッド) – 英国。攻めたデザインとフレーバー戦略で躍進した新興ブランド。
  • Just Jam(ジャストジャム) – 英国。ジャム×ベーカリー系フレーバー専門でコアな人気。
  • Liqua(リクア) – イタリア発(現在は国際ブランド化)。クセの少ない定番フレーバーを多言語展開し新興国でもシェアを持つ。
  • Alfaliquid(アルファリキッド) – フランス。欧州初期から存在する大手で、フランス国内シェアが高い。
  • Liquideo(リキデオ) – フランス。クリエイティブなフレーバーとおしゃれなプロモーションで知られる。
  • Twelve Monkeys(トゥエルブモンキーズ) – カナダ発だが欧州でも人気。南国フルーツ系の完成度が高く定番ブランド化。
  • Nasty JuiceHorny Flavaなどマレーシア勢も、イギリスやドイツ、ロシアなどで人気が高く、多く輸入されています。

欧州市場はTPDの影響で基本ボトルサイズ10ml(ニコチン入り)か50mlショートフィルが主流です。そのためブランド側もショートフィル文化に合わせた商品展開をしており、特に英国は国内ブランドが強い存在感を維持しています。各国ローカルブランドも多く、例えばドイツには“GermanFlavours”や“Copy Cat”、ポーランドには“Chemnovatic”などがあるように、各地で独自のメーカーが根付いています。

▼日本: 日本のリキッド市場は特殊で、国内ブランドは基本ニコチン0mgという制約があります。その中でもいくつか有名ブランドが育ってきました。

  • BI-SO(ビソー) – 日本初期からのブランド。抹茶やラムネ味など日本ならではのフレーバーも展開。
  • KAMIKAZE E-JUICE(カミカゼ) – 手頃な価格と豊富な味で国内ユーザーに人気。エナジードリンク味やグレープ味などが定番。
  • MK Lab(エムケーラボ) – アニメ風パッケージ「MOEシリーズ」や和テイストの「戦国シリーズ」など独自路線。味も本格派で海外評価も高い。
  • SNOW FREAKS(スノーフリークス) – 国産フルーツメンソールの人気シリーズ。ピーチスノーやメルトダウンなど清涼感ある味が売り。
  • **星達(ほしだち)**シリーズ – 国産タバコ葉エキスを使った渋いタバコ系リキッドでマニア向け。
  • BI-SONICSunrise Vaporなど他にも小規模メーカーが点在。

日本ではユーザー数自体が欧米に比べ多くないため、市場も小規模です。しかし最近では海外ブランドとのコラボ(例:Nasty Juiceが日本限定ノンニコ版を出す等)や、日本オリジナルフレーバーの海外輸出など、少しずつ国際化の動きもあります。また加熱式たばこ(IQOS等)の普及で電子タバコ人口が増えにくい面はありますが、濃厚スイーツ系リキッドなどは「日本人の舌に合う」として逆に海外で注目される可能性も秘めています。

▼マレーシア(東南アジア): 前述の通り甘くて涼しいフルーツリキッドで世界を席巻した地域です。

  • Nasty Juice(ナスティジュース) – マレーシアを代表するブランド。独特の甘さと薄荷の組合せでトップブランドに。
  • Horny Flava(ホーニーフレーバ) – 濃厚フルーツの単一フレーバー系が得意。マンゴーやパイナップルの評価が高い。
  • Fcukin’ Flava(ファッキンフレーバ) – 遊び心ある名前ながら味は本格派。清涼剤使いの巧みさで人気。
  • Monsta Vape(モンスタベイプ) – コミカルなモンスターキャラのボトルが目印。フルーツ+清涼のトレンドを牽引。
  • Cloud Niners(クラウドナイナーズ) – シンプルなフルーツソーダ系で好評。巨大な雲のような濃厚蒸気も売り。
  • Medusa Juice(メデューサジュース) – トロピカルフルーツやデザート系も展開し東南アジアで支持。
  • Bangsawan(バンサワン) – 果実+飲料系フレーバーで知られるブランド(紅茶×果物などユニークな組合せも)。

東南アジアでは他にフィリピンインドネシアも小規模ながらリキッド生産があります。特にフィリピンはメカニカルMODと濃厚リキッド文化で知られ、Philippine Mango味など国産リキッドも一部熱狂的支持を得ています。東南アジア全体として、甘くて香りが強く、清涼剤も効いたリキッドが主流という特徴があり、これは暑い気候や甘党嗜好が影響しているのかもしれません。

▼中東: 中東は近年急速に市場が拡大した地域です。UAE(ドバイ)やクウェート、バーレーンなどでは海外ブランドが数多く流通していますが、ローカルブランドも育ちつつあります。

  • Vape Monkey Dubai – ドバイのショップ兼自社ブランド。多彩なフレーバー展開で地元コミュニティに浸透。
  • Medusa Juice – 前述の通りドバイでも人気。大胆なトロピカルブレンドが中東好みにマッチ。
  • My Vapery – UAEの高品質プレミアムリキッドブランド。タバコからフルーツまで幅広いレンジを提供。
  • eCigUAE – 小売も手掛けつつ自社リキッドも開発。地元嗜好に合わせたブレンドを展開。
  • Dr. Vapes(ドクターベイプ) – 本社は英国だが、中東市場で特に成功したブランド。マンゴーなどフルーツ系の“NIC Salts”が有名。

中東では伝統的に水タバコ(シーシャ)の文化が根強く、その流れでダブルアップルやミント系の味が好まれる傾向があります。多くの海外ブランドがそういったフレーバーを意識したラインナップを中東向けに用意しているほどです。また富裕層市場でもあるため、高級路線のリキッド(ゴールドのパッケージに入った限定品など)も売れたりします。規制面では国によって差がありますが、UAEなど合法化された国では品質管理や表示のルールが整備され始め、中東発のグローバルブランドが将来出てくる可能性も十分あります。

世界中のVaperが熱狂したカルト的人気リキッド紹介

最後に、VAPEリキッドの歴史の中で**「カルト的な人気」を誇った伝説的なリキッド**をいくつかご紹介しましょう。どれも世界中のVaperから愛され、その名を聞けば「ああ、あれね!」と頷く人がいる名作です。それぞれのストーリーにも触れながら振り返ります。

  • Five Pawns「Castle Long(キャッスルロング)」 – 高級リキッドの先駆けとして2013年に登場。バーボンウイスキーにココナッツ、アーモンド、バニラ、ブラウンシュガーをブレンドしたその味わいは「まるで高級デザートをリキッドにしたようだ」と絶賛されました。価格が高めにも関わらず熱狂的ファンが付き、世界中のコンテストで賞を総なめにした伝説のフレーバーです。

  • Suicide Bunny「Mother’s Milk(マザーズミルク)」 – ストロベリーとクリーミーなカスタードが調和した一品で、2014年前後に登場すると瞬く間に大人気に。名前のインパクトもあり口コミで広がりました。プレミアムリキッドブームの火付け役とも言える存在で、真似した「◯◯’s Milk」という名前のリキッドが各社から出たほどです。当時としては甘みの中にほんのりグラハムクラッカーの香ばしさも感じられる奥行きある味で、「ずっと吸っていられるデザート系」と賞賛されました。

  • Cuttwood「Unicorn Milk(ユニコーンミルク)」 – こちらも2014~2015年にかけて一世を風靡したストロベリーミルクシェイク味。Mother’s Milkと並び称されることも多く、「ユニミ」と略され日本でも有名でした。当時は入手困難になるほど売れに売れ、「幻のリキッド」とまで呼ばれたことも。レシピを巡って憶測やクローンレシピが飛び交い、皆がこの魔法のようなおいしさを再現しようと躍起になったのもカルト的人気たるゆえんです。

  • Halo「Tribeca(トリベカ)」 – 初期から現在まで生き続ける不朽の名作タバコ系リキッドです。キャラメル&バニラ風味のRY4系たばこ味として完成度が高く、禁煙からVAPEに移行した人の多くがこのTribecaに救われたと言われます。「電子タバコらしさと美味しさの完璧なバランス」として、2010年代を通じ数々のアワードを受賞しました。今でもタバコ系のベンチマークとして語られる殿堂入りフレーバーです。

  • Vampire Vape「Heisenberg(ハイゼンベルク)」 – イギリス発、謎のブルーリキッドとして知られる一品です。ベリー系フルーツの甘みと強烈なメンソール&清涼感、さらに隠し味にハーブのようなニュアンスも感じる唯一無二の風味で、「何この味!? でもクセになる!」と口コミが爆発。名前は某ドラマのキャラクター由来ですが、中身のレシピは企業秘密。各社が似たコンセプトの「ブルー◯◯」リキッドを出しましたが、未だ本家の独特さには及ばないとも言われます。英国のみならず欧州全体でベストセラーとなり、世界的にもメンソール系フレーバーの代表格となりました。

  • Dinner Lady「Lemon Tart(レモンタルト)」 – 2016年に登場するや各国のアワードを総なめにした、近年最高峰との呼び声も高いデザート系リキッドです。レモンの酸味とタルト生地の甘香ばしさがリアルすぎて、「カロリーゼロのスイーツだ!」と大絶賛されました。デザート系は数あれど、このLemon Tartの完成度は群を抜いており、「もし一生一つのリキッドしか吸れないならLemon Tartを選ぶ」というファンもいるほど。Dinner Ladyブランドを不動のものにした歴史的名作です。

  • Nasty Juice「Cush Man(クッシュマン)」 – マレーシアから世界を席巻したマンゴーフレーバーの金字塔。熟したマンゴーの濃厚な甘さに爽快な低ミントが加わり、「南国そのもの」の味わいと称されました。2016~2017年頃には欧米のVape Expoでも注目の的となり、「マレーシアリキッド恐るべし!」とその実力を見せつけました。マンゴー系リキッドと言えば必ず名前が挙がる存在で、中東や東南アジアでも爆発的に売れました。

  • T-Juice「Red Astaire(レッドアスター)」 – 2013年に英国で生まれたフレーバーですが、根強いカルト人気を持っています。赤いベリーと黒ブドウの甘酸っぱさに、強烈なアニス(甘草)とユーカリ、そしてメンソールが畳みかけるまさに攻めた味。好き嫌いは分かれますがハマる人はとことんハマり、ヨーロッパでは一世を風靡しました。ドイツやフランスでもファンが多く、「吸うリキュール菓子」なんて表現されることも。濃い赤色の液体も相まって、一度試すと忘れられない個性派リキッドです。

  • Mt Baker Vapor「Hawk Sauce(ホークソース)」 – これはアメリカの老舗Mt Baker Vaporが生んだ伝説の格安リキッドです。ベリー系とメンソールが主体ですが、何とも言えない独特の甘酸っぱさが「癖になる!」とコミュニティで話題に。2010年代前半、北米の多くのVaperが一度は試したことがあると言われ、値段の安さも手伝って大量購入するファンもいました。「鷹のソース」という名前の謎めいた響きも人気に拍車をかけ、クローンレシピが出回るなどこちらもカルト的な存在です。

  • Grant’s Vanilla Custard(グラントのバニラカスタード) – 最後に番外的に紹介したいのが、個人が趣味で作っていたリキッドが伝説化した例です。イギリスのGrant氏が自家製で作ったバニラカスタード味は、2013年前後にネットフォーラムで「史上最高のカスタード」と評判が広がり、入手困難な幻のリキッドとなりました。正式な販売はごく少量だったにも関わらず、そのレシピを再現しようと世界中のDIY愛好家が躍起になり、一大“カスタードブーム”を巻き起こしました。今の市販カスタード系リキッドの多くは、この**GVC(Grant’s Vanilla Custard)**に影響を受けているとも言われます。

いかがでしょうか。他にも語り尽くせない名作リキッドは多数ありますが、時間の都合でこの辺にしておきます。これらカルト的人気リキッドの存在は、VAPEリキッドの歴史に色濃い足跡を残しました。味の素晴らしさはもちろん、その背景にあるストーリーやコミュニティの熱狂ぶりも含め、Vaperたちの記憶に刻まれています。

以上、VAPEリキッド業界の激動の歴史を地域別・ジャンル別に徹底解説してきました。黎明期から黄金期、そして規制の荒波を経て現在に至るまで、本当にドラマチックな展開でしたね。新しい味との出会いに胸をときめかせた日々、規制に憤りお気に入りのリキッドを買いだめした思い出…Vaper一人ひとりに語りたい物語があることでしょう。

VAPEリキッド業界の歴史はまさにドラマ。 時代の流れの中で多くのブランドが生まれ、そして消えていきました。今日名前を挙げた中で、あなたの好きなブランドや思い出のリキッドは登場したでしょうか? そして――あなたの好きなブランドは今も生き残っていますか?

急速に移り変わるこの業界ですが、どんなに規制が厳しくなろうとも、人々が「新しい美味しい味」を求める限りリキッドの進化は止まりません。これから先、2025年以降の未来には一体どんなリキッドが登場するのか…想像するだけでワクワクしますね。

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