過去に存在したが現在は倒産・消滅したVAPE/ヴェポライザーメーカーたち

近年急成長したVAPE(電子タバコ)業界ですが、その波に乗れず 過去に存在したものの現在は倒産あるいは消滅してしまったメーカー も少なくありません。本記事では、そうしたメーカーをピックアップし、それぞれの 設立(時期・国)、成長の経緯主な製品・技術失敗の要因倒産・消滅の経緯 について詳しく解説します。最後に各社を比較した表と、ゆっくり霊夢と魔理沙によるコミカルな解説動画風の台本も用意しました。

目次

1. V2 Cigs(VMR Products)[米国]

設立時期・国:V2 Cigsを展開したVMRプロダクツ社は2009年米国フロリダ州マイアミで設立されました​。創業者はジャン・ヴァールール氏とダン・レシオ氏で、社名の「V2」は「人生のバージョン2.0」を意味しています​。

成長の経緯:2010年に自社サイトで電子タバコ「V2」を販売開始し、1年で売上は1,900万ドルに達しました​。2011年には「世界最大の電子タバコオンライン販売社」と自称するほど急成長し、その後はガソリンスタンドなど実店舗にも進出しました​

2012年の売上5,000万ドルから2013年には8,000万ドルに達する見込みと報じられるなど、オンライン中心にトップクラスのシェアを築きました​。また2012年には女性向けブランド「Vapor Couture」を欧州で立ち上げるなど、新市場開拓にも積極的でした​。

主な製品・技術V2電子タバコ(使い捨てカートリッジとバッテリーから成るシガレット型デバイス)が主力製品でした。後には「V2 Pro」シリーズとして、リキッド・ドライハーブ・ワックスの3種類に対応する多機能VAPEペン(シリーズ3やシリーズ7)も発売し、製品ラインナップを拡充しました。またフレーバー面でも数多くのカートリッジ風味を展開し、女性向けのスタイリッシュなデザイン製品も投入しました。

成長の秘訣:インターネット通販をいち早く活用し、手軽に試せるスターターキット戦略で多くのユーザーを獲得しました。品質と顧客サポートにも定評があり、オンラインの口コミでブランドを確立しました。また欧米のみならず、中国深圳に供給拠点、チェコのプラハに流通拠点を置くなどグローバルな供給網を築いたことも成長を支えました​。

失敗の要因:2016年に米国FDA(食品医薬品局)が電子タバコを規制対象に加えると発表し、以降の新製品投入が困難になったことが大きな打撃となりました​。ちょうどその頃、USBメモリ型のスタイリッシュな新興製品**「JUUL」**が台頭し始めます​。VMR社も次世代製品開発に注力していましたが、規制下での新モデル投入は叶わず、急成長するJuulに対抗できませんでした​。さらに2015年には中国の華宝国際控股(Huabao社)に51%の株式を売却​し経営体制が変化。自社でサプライチェーンを内製化する計画も進めていましたが、急速な市場変化に追いつけなかったようです。

倒産・消滅の経緯:競争と規制の板挟みにあったVMR社は2018年10月、業界首位に躍り出たJuul Labs社に7,500万ドルで会社を買収されました​。Juul社による買収の目的は、VMRが持つ中国市場参入のルートを得るためとも報じられています​。買収完了に伴い、2018年11月2日付けでVMR社の事業および「V2」ブランドの製品提供は終了し、数百万いたと言われるV2ユーザーは行き場を失う結果となりました​

2. Green Smoke(グリーンスモーク)[イスラエル/米国]

設立時期・国:Green Smoke社は2008年に設立され、開発拠点をイスラエル、販売拠点を米国に置いていました​。2009年から電子タバコ製品の販売を開始し​、イスラエル発のベンチャーながら主戦場はアメリカ市場でした。

成長の経緯:シガレット型の電子タバコ(いわゆる「シガライク」)を中心に高品質な製品を展開し、オンライン通販等で着実に顧客を増やしました。その結果、2013年の年間売上は4,000万ドル規模に達し​、業界でも注目される存在となりました。こうした成功に目を付けた大手タバコ会社アルトリア(マルボロ等を擁する米タバコ企業)は、2014年にGreen Smoke社の買収を発表。買収額は1億1000万ドル(加えて最大2,000万ドルの業績連動報酬)という大型ディールとなりました​。アルトリアは既に自社開発の電子タバコ「MarkTen」を展開していましたが、Green Smokeのブランド力・ノウハウ・製品ラインを取り込むことで競争力強化を図ったのです​。

主な製品・技術Green Smoke電子タバコは使い捨てカートリッジ式のシガライクで、「充電式バッテリー+フレーバーカートリッジ」を組み合わせて使用する手軽さが売りでした。豊富なフレーバー展開や、メンソールなど従来の喫煙者が好む味を重視した商品構成で、多くの初心者を取り込みました。また使い捨て型の「ディスポーザブル電子タバコ」も併売し、コンビニ等でも購入できる入手性の良さも強みでした。

成長の秘訣:黎明期の電子タバコ市場において、Green Smokeは「伝統的なたばこのような使用感」に注目しました。紙巻きたばこと同じような形状・サイズ感で、スイッチ操作不要の自動吸引型という馴染みやすさが、多くの喫煙者の移行を促しました。またインターネット上のレビューで「味が良い」「煙(蒸気)の量が満足」と評価され、口コミでブランドが広がりました。アルトリアによる買収後は大手の資本力で全米規模の販促が可能となり、一時は米国電子タバコ市場で一定のシェアを維持しました。

失敗の要因:市場環境の激変が直接の要因です。2015年以降、VAPE業界ではペン型・BOX型などより大きなバッテリーで大量の蒸気を出せる製品や、後にはコンパクトなPOD型(カートリッジ交換式のデバイス、例:JUUL)の台頭により、従来型シガライク製品の人気が相対的に低下しました​。Green Smokeはアルトリア傘下で開発が続けられましたが、POD式全盛の波に乗り遅れたこと、そしてJuulを筆頭とする新興勢力が爆発的に成長したことで存在感を失っていきます​。親会社アルトリアは将来性をJuulや加熱式たばこデバイスに見出し、自社の既存電子タバコブランド(MarkTenおよびGreen Smoke)から撤退する経営判断を下しました​。

倒産・消滅の経緯2018年12月19日、アルトリアはGreen SmokeおよびMarkTen製品の販売終了を発表しました​。これは同社がJuul Labsへの巨額出資(35%株取得)を決断したタイミングと重なります​。既存製品を整理しJuulや新製品(加熱式たばこ「iQOS」等)にリソースを集中させる狙いで、Green Smokeブランドは廃止が決定されました​。この突然の発表により、長年Green Smokeを愛用してきたユーザーは代替品を探す羽目になり、市場から一つの草分け的ブランドが姿を消すことになりました。なおブランド自体は消滅しましたが、親会社の経営破綻ではないため法的な倒産手続きは踏んでいません(単なる事業撤退です)。それでも業界には「老舗シガライクの終焉」として衝撃が走り、シガライク派ユーザーの一部は不満を募らせました​。

3. ProVape(プロベイプ)[米国]

設立時期・国:ProVape社は2010年頃米国ワシントン州で設立されました(初代製品のProVariが2010年発売)​。創業者は航空宇宙産業で働いていたエンジニア達で、シアトル近郊のモンローという町に拠点を置いていました​。

成長の経緯:同社は高品質な高級VAPEデバイスの先駆者でした。2010年発売の初代「ProVari」はステンレス製の頑丈なボディと軍用グレードの電子基板を備え、当時まだ珍しかった可変電圧機能を持つ高級機でした​。価格は約200ドルと高額にもかかわらず、「壊れにくく信頼性抜群」と口コミで広がり、熱心なVAPE愛好家たちの支持を得てヒットしました。2011年以降はバッテリーサイズ違いの「ProVari Mini」や後継モデルを投入し、一時はアメリカ製モッズ(Mod)として不動の地位を築きました。

主な製品・技術:代表的製品はProVariシリーズです。太い円筒形の筐体に18650等のリチウム電池を入れ、電圧や後にはワット数を細かく調節できる電子タバコ・モッドでした​。独自開発の制御チップにより安定した出力と各種保護機能を実現し、「最も信頼できるVAPEデバイス」と称されました。また筐体の精巧な機械加工や重厚感のあるデザインも評価され、耐久性では群を抜いていました​。

成長の秘訣:まだ中国メーカー製の安価な機種が市場を席巻する前の時期に、「品質にお金を惜しまない」愛好家層に訴求できたことが成功の理由です。ネット上のレビューやフォーラムでもProVariの堅牢さが話題となり、「一生モノの電子タバコ」といった賛辞も受けました。当時は低価格機に不具合や故障も多かったため、「安心を買う」という価値提案が通用したのです。

失敗の要因:市場の変化についていけなかったことが最大の要因です。VAPE市場は日進月歩の技術競争に突入し、毎月のように新製品が登場する様相となりました。その中でProVapeは「品質重視でゆっくり改良」という路線を取り、最新トレンドだった可変ワット数機能の搭載も他社より遅れてしまいます(可変W対応の後継機P3発売は2014年)​。一方で中国メーカーは急速に品質を改善しつつ、はるかに低価格で多機能な製品(たとえば50ドル程度で各種モード搭載の機種)を次々投入してきました​。4倍の価格差を埋めるほどの優位性を示せなくなったProVapeは次第に売上を落としていきます​。追い打ちをかけたのが2016年のFDA規制(Deeming Regulations)で、2016年8月8日以降は新製品発売が凍結されてしまいました​。その時点でProVapeの製品はやや時代遅れになりかけていたにもかかわらず、新モデル投入もデザイン変更も不可能となり、打つ手がなくなってしまったのです​。

倒産・消滅の経緯:在庫一掃セールなどで延命を図った後、2017年初頭にProVape社は事業閉鎖を決断しました​。公式メールで顧客に閉鎖を告知し、「長年の支援に感謝する」として静かに業界から姿を消しました​。倒産理由について社長は「FDAの新規制による将来不確実性」を挙げており、市場を創り上げた先駆者の一社が 規制と競争に“殺された” 形です​。なお閉鎖後、2019年にProVapeの商標とサイトは第三者に売却され、現在は全く別の通販サイトが“ProVape”ブランドで運営されています​。

4. Herbalizer(ハーバライザー)[米国]

設立時期・国:Herbalizerは2013年頃米国カリフォルニア州サンディエゴで創業しました​。設立メンバーには元NASAのエンジニアが含まれており、「宇宙工学の技術で究極のヴェポライザーを作る」として注目を浴びました​。

成長の経緯:2013年~2014年頃に発売された据置型ヴェポライザー「Herbalizer(通称:Herbie)」は、当時最高峰の性能と斬新なデザインで登場しました。価格は約700ドルと非常に高価でしたが、それでも売れ行きは好調で、高級路線の据置型デバイスとして確固たる地位を築きました​。競合製品であるドイツ製のVolcano(ボルケーノ)デジタル版より高額にもかかわらず支持を集め、「ラグジュアリーVape」の代表格となったのです​。

主な製品・技術:唯一の製品である**Herbalizer(ハーバライザー)**は、球状の近未来的デザイン筐体にディスプレイを備え、ハロゲン電球ヒーターで瞬時に加熱できるのが売りでした。ドライハーブ(乾燥ハーブ、主に医療/嗜好用のハーブ類)を高精度に温度管理して加熱し、付属の風船バッグやシリコンホースを通じて蒸気を吸引する方式を採用。従来機より温度立ち上がりが速く、アロマセラピー(芳香療法)用途にも使えると宣伝されました。また、「元NASA技術者設計」のフレーズで先進性をアピールし、高機能ぶりを強調していました。

成長の秘訣:当時のVape市場では据置型(デスクトップ型)ヴェポライザーは数少ない存在で、Volcanoが事実上の王者でした。Herbalizerはそこに敢えて挑み、差別化要素としてデザイン性と**革新的な技術(ハロゲン熱源)**を打ち出しました。技術マニアや医療大麻ユーザーなど、品質最優先の層に支持され、また話題性からメディアにも取り上げられ富裕層へのプレゼント需要なども取り込んだようです。高価格にも関わらず「売れている」という事実そのものがブランドの高級感をさらに高め、ある種のステータスシンボル的な人気を博しました。

失敗の要因:内部の経営トラブルと法的トラブルが重なりました。創業後しばらくして会社の乗っ取り劇(敵対的買収)が発生し、設計を担っていた創業者の一人が経営陣から追い出される事態となります​。経営権を掌握したグループは創業者に株の買い取り提案をしましたが決裂し、その後会社資産を別会社に売却する形で実質的に乗っ取りが完了、創業者の持つ株は無価値化してしまいました​。この内紛劇で組織が混乱する中、追い打ちをかけたのが特許訴訟です。競合のドイツ企業Storz & Bickel社(Volcanoのメーカー)が、Herbalizer社を相手取って特許侵害で訴訟を提起しました​。資金力で勝る相手との法廷闘争はHerbalizer社には荷が重く、最終的に2018年頃に事業継続を断念します​。

倒産・消滅の経緯:上記のような混乱の末、Herbalizer社は2018年9月までに静かに閉鎖されました​

(公式発表等はなく、突然ウェブサイトが消えたため販売店が困惑したと伝えられています​)。法的には明確な倒産手続きが報じられたわけではありませんが、実質的に会社資産売却による解散状態です。高額製品ゆえ購入者には長期保証が付いていましたが、会社消滅により保証は無効となり、多くのユーザーが泣き寝入りする形となりました​。業界への影響としては、「高価格帯市場の難しさ」を印象付けた事件でした。同時期に多様な競合が増え市場が成熟したことで、一社のみが突出した高級路線を維持することの困難さが露呈したとも言えます。

5. Ghost Vapes(ゴースト・ベイプス)[カナダ/英国]

設立時期・国:Ghost Vapes社は2015年頃に創業したスタートアップ企業です。公式情報は多くありませんが、本社はカナダにあり開発拠点は英国ロンドンだったとも言われます。グローバルに展開する意向で、北米・欧州市場を視野に入れていました。

成長の経緯:2017年に満を持して投入した携帯型ヴェポライザー「Ghost MV1」でデビューしました​。発売前から「次世代の携帯ハーブVape」としてSNSやフォーラムで話題を集め、ハイエンドなポータブル機として注目されました。しかし発売直後に初期不良(ヒートシンク部品の不具合やガラス製マウスピースの破損)が見つかり、急遽改良版への交換対応に追われるスタートとなりました​。その後は改良を加えて市場投入し直し、一定の評価を得て販売は継続されました。

主な製品・技術Ghost MV1はポータブル型ながらドライハーブと濃縮エキス(ワックス)両方に対応した意欲作でした。他社にはない対流式加熱(コンベクション)による高品質な蒸気と、近未来的なメタリックデザインが特徴です。またスマートフォンとBluetooth連携し専用アプリで温度制御や設定が行える先進的機能も搭載していました。しかしバッテリーは専用設計のニッケル水素電池パックで、本体重量もかなり重く、携帯性にはやや難がありました​。

成長の秘訣:熱心なVapeレビューサイトやYouTuberとの協力で「最もクールなガジェット系ヴェポライザー」としてマーケティングを展開しました。特にビジュアル面のインパクトで若年層の関心を引き、限定カラー版(米バンド「Slightly Stoopid」とのコラボモデル)を出すなど話題作りに注力しました​。技術志向のユーザーには性能が評価され、「携帯型なのに卓上型並みの本格蒸気」という点で根強いファンを獲得しました。

失敗の要因:いくつかの誤算が重なりました。まず製品コンセプトのミスマッチがあります。重厚で操作にコツがいるGhost MV1は、一部マニアには絶賛されたものの、手軽さを求める一般ユーザーには扱いにくい面がありました​。スマホ連携も話題になりましたが、2019年にAppleがVape関連アプリを一斉禁止したためiPhoneユーザーはアプリが使えなくなり、高度な機能がかえって宝の持ち腐れになる事態も起きました​。さらにマーケティングの方向性ミスも指摘されています。若い世代(Gen Zやミレニアル世代)にリーチしようと音楽シーンとコラボしましたが、そうした層はそもそも手軽なカートリッジ式や電子リキッド式を好む傾向が強く、ハーブ用本格機であるMV1は響きませんでした​。むしろ中高年の愛好者層への地道な教育が足りなかったとも言われています​。そして極め付きは資金繰りです。開発・改良にコストが掛かったうえ、市場で爆発的ヒットとまではいかなかったため追加投資が必要でしたが、2020年初頭に入るとCOVID-19による経済不安もあり出資者が撤退、資金ショートに陥りました​。

倒産・消滅の経緯:Ghost Vapes社は2020年4月に全従業員を解雇し事業停止。公式な発表は控えめでしたが、リーク情報によりGhost社がMV1の生産停止と会社清算に入ったことが伝えられました​。事実上の倒産であり、サポートも終了したため、ユーザーは保証修理などを受けられなくなりました。業界的には「優れた製品を持っていてもビジネスとして成功するとは限らない」例として語られ、特にスタートアップがハードウェア市場で生き残る難しさを示すケースとなりました​。Ghostの失敗以降、高性能ポータブル機を開発する新興メーカーは減少し、市場は老舗や大手(Storz&Bickel社のCrafty+等)か、小規模職人系メーカーに二極化していったと言われます。

6. VapeXhale(ベイプエクスヘイル)[米国]

設立時期・国:VapeXhale社は2012年に米国カリフォルニア州で設立されました。創業者のセイボ・シェン(Seibo Shen)氏は熱心なVapeユーザーで、自身の理想のデスクトップ型ヴェポライザーを開発するため起業しました。

成長の経緯2013年5月に発売した据置型ヴェポライザー「Cloud EVO」が大ヒットしました​。卓上型ハーブ用ヴェポライザーとして当時最高クラスの評価を受け、**米High Times誌の「ベストデスクトップVape」**に選ばれるなど賞賛されました(実際、2010年代前半はPAXのポータブル機やドイツのVolcano、そしてVapeXhale Cloud EVOが高評価の三巨頭でした​)。法律の緩和に伴いアメリカ各地でハーブ(大麻)用途が拡大した2010年代前半は、高品質ヴェポライザーの需要が伸び、VapeXhaleもその恩恵で売上を伸ばしました​。

主な製品・技術Cloud EVO(クラウド・エボ)は、ガラス製の水パイプ(HydraTube)と一体化して使う独特の構造が特徴でした。純粋な対流式加熱でハーブの有効成分を引き出しつつ、水フィルターで冷却・加湿された滑らかな蒸気が得られることから、「最も健康的なヴェポライザーの一つ」と称されました​。価格も当初400~500ドルと高めでしたが、品質志向のユーザーには支持され、口コミで「味と効果が別格」と広まりました。また同社はアクセサリ類も充実させ、各種ガラスアタッチメントを販売するなどエコシステムを構築しました。

成長の秘訣:ライバルが少ない高級卓上型市場で先行者利益を得られたことが大きいです。Cloud EVOは発売当初から出荷が追いつかないほど注文が入り、生産が追い付かず中古がプレミア価格で取引されるほど人気化しました。「デスクトップ界のゲームチェンジャー」とまで言われた製品力がブランドの支柱となり、ユーザーのロイヤリティも高まりました。またYouTube等での評判が口コミを呼び、知名度の割に広告宣伝費をかけずに済んだ点もスタートアップとしては助けになりました。

失敗の要因:市場の成長予測を誤った点と、新規事業の失敗です。2016年以降、米国での大麻合法化が進むと多様な消費方法(食用のエディブルや液体滴下、使い捨てペン型デバイス等)が登場し、必ずしも卓上ヴェポライザーが主流にはなりませんでした​。「合法化で巨大市場になる」という期待に反して、大型デバイス需要は伸び悩み、業界全体で在庫過多や売上予測未達が相次ぎました​。VapeXhaleもこの煽りで成長が鈍化します。そこで同社は**2019年に“Hanu Labs”と名を変え、濃縮物用PODデバイス「Hanu Stone」事業へとピボット(転換)**しました​。これはコンセントレート(大麻エキス)用の専用カートリッジビジネスで、PAX社などが成功しつつある分野でした​。しかしこの事業には多額の投資資金が必要で、資金力で勝るPAX社に対抗するのは困難でした​。肝心のHanu Stoneも市場の受け入れが悪く、少数のカリフォルニアの販売店で試験展開したのみで撤退する結果に終わります​。新規事業が会社の資金を食いつぶし、本来の稼ぎ頭であるCloud EVOの改良や在庫確保にも支障をきたすようになりました​。2021年には創業者のシェン氏が経営を退き、新CEOの下でCloud EVO後継機の開発(コードネーム:Petra)が発表されますが、2021年末予定の発売は実現せず、予約販売も打ち切られます​。結局、販売減少やサプライチェーン問題、原材料費高騰が重なり資金が尽きてしまいました​。

倒産・消滅の経緯:Hanu Labs(旧VapeXhale)は2022年2月に事業停止が明らかになりました​。公式声明はありませんでしたが、業界メディアは「VapeXhale/ Hanu Labsがついに廃業」と報じました​。優れた製品を持ちながらも市場変化と経営判断ミスで姿を消した例として、多くのファンに惜しまれました。また同社の消滅は、大麻ヴェポライザー市場が大型機から小型機へ移行していく象徴的な出来事でもありました​。実際、合法化の進展で気軽なペン型や他の摂取方法が台頭し、「時間をかけて据置機で楽しむ」というスタイルはニッチ化しています​。VapeXhaleの退場は、市場ニーズの変化を映し出す鏡と言えるでしょう。

倒産・消滅した主なVAPEメーカーの比較表

各社の特徴と失敗要因を比較表にまとめます。

メーカー(国) 設立(年・国) 代表的製品・技術 倒産/消滅 主な失敗要因
VMR Products
(V2 Cigs)[米国]
2009年
米国フロリダ州
V2シガライク電子タバコ
V2 Pro多機能Vapeペン
2018年11月
(Juul社に買収され事業終了)
規制強化で新製品投入不可
Juulの台頭による競争敗北
Green Smoke
(グリーンスモーク)[イスラエル/米国]
2008年
イスラエル発・米国市場
Green Smokeカートリッジ式電子タバコ 2018年12月
(親会社アルトリアがブランド廃止)
市場のPOD型シフト
親会社の戦略転換(Juul重視)
ProVape
(プロベイプ)[米国]
約2010年
米国ワシントン州
ProVari高級VV/VW対応MOD 2017年初頭
(自主的に廃業)
価格競争力の低下(中華製品との競合)
FDA規制で開発停止
Herbalizer
(ハーバライザー)[米国]
2013年
米国カリフォルニア州
Herbalizer据置型ハーブVape(ハロゲン加熱) 2018年頃
(事業資産売却で実質消滅)
内部抗争による経営崩壊
特許訴訟による打撃
Ghost Vapes
(ゴースト)[カナダ/英国]
2015年
カナダ(開発は英国)
Ghost MV1携帯ハーブVape
(BT連携機能搭載)
2020年4月
(資金枯渇で倒産)
製品がニッチ過ぎ一般受けせず
資金調達難+コロナ禍
VapeXhale
(ベイプエクスヘイル)[米国]
2012年
米国カリフォルニア州
Cloud EVO卓上ハーブVape
(水パイプ連結型)
2022年2月
(事業継続断念)
大型市場縮小と需要読み違い
新規事業失敗で財務悪化

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